モーツァルト : ピアノ協奏曲 第26番「戴冠式」 ニ長調 K.537
Mozart, Wolfgang Amadeus : Konzert für Klavier und Orchester Nr.26 'Krönung' D-Dur K.537
作品概要
解説 (1)
執筆者 : 稲田 小絵子
(928 文字)
更新日:2007年11月1日
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執筆者 : 稲田 小絵子 (928 文字)
以前は盛んに作曲されていたピアノ協奏曲だが、この作品は前作から1年以上もの間があいている。演奏会のために作曲されるジャンルであるピアノ協奏曲が不作であるということは、すなわちモーツァルトの演奏家としての活動が低下したことを意味している。事実、1787年には予約演奏会は予約客不足のために一度も開催されていない。ヴィーンの聴衆のモーツァルト熱が冷めかけていたのに加え、この作品が完成されたまさに1788年2月に、オーストリアのトルコ戦争への参戦によって、ヴィーンの音楽文化が大きな打撃を受けたことが大きな原因であろう。
こうした事情により、この協奏曲は完成したまま演奏会を開くことができず、ようやく初演されたのは1789年4月、ベルリンへ向かう途中のドレスデン宮廷においてであると考えられている。
《戴冠式》という愛称の由来は、1790年10月15日にレオポルト二世の戴冠式の祝賀宴、2曲の交響曲およびピアノ協奏曲第19番K.459と共に演奏されたことによる。
この作品の自筆譜では、ピアノ・パートはやや不完全であり、スケッチ風な箇所もみられる。特に第2楽章の右手パートは主要旋律のみ、そして左手には何も書かれていない。この左手部分に関しては、1794年の初版に際してJ. A. アンドレによって書き込まれたものが一般に使用されている。
作曲家自身による第1楽章のカデンツァは残されていない。
第1楽章:アレグロ、ニ長調、4/4拍子。協奏的ソナタ形式。トランペットとティンパニを伴った輝かしさをもつものの、全体としてその使用は控えめであり、むしろ室内楽的な一面をも見せる。これら2つの楽器は演奏に際して後から加えられたという説が有力であり、モーツァルトは当初、この協奏曲を小編成でも演奏できる形態で想定していたと考えられる。
第2楽章:[ラルゲット]、イ長調、2/2拍子。三部形式。全体的に穏やかな主題から成る楽章。独奏ピアノが素朴な主題で始め、楽章を通して主導的な役割を果たす。
第3楽章:[アレグレット]、ニ長調、2/4拍子。ロンド形式。途中に翳りを見せながらも軽快なリズムを前面に押し出した典型的なロンド・フィナーレである。独奏ピアノにも華やかなパッセージが目立つ。
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