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リスト : 巡礼の年 第2年「イタリア」 「ペトラルカのソネット 第123番」 S.161/R.10-6 A55

Liszt, Franz : Années de pèlerinage deuxieme année "Italie" "Sonetto 123 del Petrarca" S.161/R.10-6

作品概要

楽曲ID:23729
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:5分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

解説 : 伊藤 萌子 (368 文字)

更新日:2019年1月9日
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第4番から第6番は、イタリア・ルネサンスを代表する叙情詩人、フランチェスコ・ペトラルカ(1304-74)の代表作である『カンツォニエーレ』より。『カンツォニエーレ』はペトラルカがラウラへの愛を歌ったもの。また、ソネットとはイタリアで生まれた14行の定型詩を言い、「小さな歌」を意味しており、ペトラルカとダンテによって完成された。リストは第47番、第104番、第123番を採り上げて作曲した。

ほぼ同時期に歌曲(S.270)としても作曲されており(同一の旋律を持つ)、両方とも1846年に出版された。現在知られているのはその改訂版である。

第6番「ペトラルカのソネット 第123番」の詩は、地上で天使の姿を見たというくだりから始まり、恋の甘美さを歌ったもの。穏やかで優美な曲調は、続く「ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲」の激しさと対照的である。

執筆者: 伊藤 萌子

演奏のヒント : 大井 和郎 (1136 文字)

更新日:2018年3月12日
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6. ペトラルカのソネット 第123番  

この曲の演奏のヒントは歌心に尽きます。他のソネットも歌心は必要ですが、この123番に限っては、特に歌唱力が伴になります。冒頭からその他の注意点などを追っていきます。

◉ 拍子は4分の4拍子で、3連符が伴奏になっています。2声のトレモロはオーケストラの中の弦がゆっくり奏でているように演奏します。このタイプの伴奏系が入ってきた時、曲はゆっくりと横に流れますが、決して流れを止めたり、あるいは急いだりしないように気をつけます。

◉ 6小節目の1拍目、メロディーのFは前の小節からのサスペンションです。2拍目で解決します。同じく7小節目1拍目、メロディーのGは前の小節からのサスペンションです。同じく2拍目で解決します。このような「非和声音」と「解決音」の区別をつけ、解決音でアクセントをつけたり、非和声音と同じ音量で弾かないようにします。以降、アパジャトゥラやサスペンションなどの非和声音がメロディーラインに多く出てきますので、同じ処理をします。

◉ 15小節目以降、切れることなく続いていた3連符は断片になり出てきます。3連符が連続しないところは、歌手が自由に歌える場所です。時間をたっぷり取り、自由に歌ってください。

◉ 16小節目以降に出てくる多くのアルペジオは、「どのように弾かれるか」でムードが決定します。あまり速すぎても鋭くなってしまいますし、遅すぎると今度は実音と聴き分けができなかったり、重たくなったりしますが、あくまで伴奏系ですので、柔らかく、軽く、弱く、速すぎないように気をつけるとよいでしょう。

◉ 31小節目、グリスアンドのようにスムーズに降りてきてください。ここも急ぐ必要はありません。33小節目、もう一度同じことが起きますので、1回目とは異なる演奏法が望ましいです。

◉ 41-44小節間、仮説に過ぎませんが、オルゴールをイメージしても良いでしょう。その場合、オルゴールのように、機械的で、シェープもしませんし、ダイナミックも変えません。44小節目、ゼンマイが緩んでくるように遅くなっても良いと思います。

◉ 45小節目、夢の世界です。右手はpppで。左手は、メロディー以外をpppで演奏します。

◉ 57小節目は、56小節目からのstringendo moltoで相当速くなりますが、58小節目に入った時、テンポを理に叶わせて下さい。つまり、58小節目は3連符が無くなりますので、8分のスピードになります。58小節目で速すぎないようにします。

◉ 80小節目のritenutoは84小節目まで続きます。そこまで点線が書いてありますね。83-84小節間、かなり遅いテンポになります。十分時間を取って下さい。

執筆者: 大井 和郎

参考動画&オーディション入選(1件)

城 寿昭

楽譜

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