作品概要
解説 (2)
マズルカ第48番(遺作)の解説 : 菅野 雅紀
(1335 文字)
更新日:2010年2月1日
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マズルカ第48番(遺作)の解説 : 菅野 雅紀 (1335 文字)
ショパンの没後、ユリアン・フォンタナによってまとめられ、作品67の《4つのマズルカ》とあわせた8曲が出版された。作品50以降、ショパンはマズルカを3曲ごとにまとめて出版しており、4曲を一組にすることが妥当であったのかという疑問は残されるが、ショパンが信頼を寄せていたフォンタナによる作品の組み合わせには、ショパンらしさを残そうとする意図がうかがえる。
作品67、作品68のいずれも、第1曲には活力に溢れる長調のマズルカが配されており、ともに「Vivace」と付けられている。ショパンは作品7、作品50、作品63などで同様の配置をしており、フォンタナはその傾向を意識したものと推されるが、エキエル版ではこれらの速度表記は取り払われている。最後に短調のマズルカを置く傾向はショパンのマズルカでより顕著に示された傾向であり、曲順に疑問の残されるいくつかの作品を除いて、生前に出版されたすべての作品で、その最後に短調のマズルカが配されている。
このような、ショパンが好んでいた曲想のまとまりに加え、フォンタナは調性の関係を強く意識して4つの作品を組み合わせたものと考えられる。作品68の場合、第1曲と第2曲は並行調の、第3曲と第4曲は同主調の関係にあり、第2曲と第3曲の間も、下属調の並行調と、きわめて近い関係の調性が選ばれている。
4つのマズルカは一定のまとまりをもってはいるものの、これは必ずしもショパンの意図ではなく、とりわけ調性関係については、生前に出版されたマズルカに同様の特徴がみられることもないため、ショパン自身がまとめた作品群とは区別して考えた方がいいだろう。近年編纂が 進められているエキエル版では作品番号を付けずに、作曲年代順に掲載されているほか、今後出版される予定のペータース原典版でも同様の処置がなされるものと考えられる。しかし、これらの作品に対する統一的表記が浸透していない現状において、今後もしばらくは作品番号が統一表記としての役割を果たしていくこととなるだろう。
*ヘ長調 作品68-3
作品68-1のマズルカとほぼ同時期、ショパンの最初のウィーン訪問(1829年)から祖国ポーランドを発つ頃(1830年末)までに書かれたものとされる。他の初期のマズルカと同様、簡素な楽式による、より実用的なマズルカの雰囲気を持っている。
変ロ長調に転調した中間部では、変ロ音とへ音上で奏でられる空虚5度の上で、第4音を半音上行させたジプシー的な音階が響き、民族的な香りが強く漂う。また、他のマズルカにはあまりみられない特徴として、この部分に「Poco piu mosso」と速度の変更が指示されていることは興味深い。マズルカは、マズル、オベレク、クヤヴィアク、クラコヴィアクなどポーランドの様々な民族舞踏の要素が取り込まれたものとされるが、これらの舞踏には共通したリズム音型があるため、リズムだけで舞踏の種類を断定することは出来ない。その一方で、テンポの緩急はそれぞれの舞踏に特徴的な要素であり、速度が変更されることで、舞踏の種類が変わったことが、ここでははっきりと示されたといえる。急速なテンポと、回転を感じさせる音型から、この中間部がオベレクの特徴を持っているといえる。
解説 : 菅野 雅紀
(485 文字)
更新日:2010年2月1日
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解説 : 菅野 雅紀 (485 文字)
作品68-1のマズルカとほぼ同時期、ショパンの最初のウィーン訪問(1829年)から祖国ポーランドを発つ頃(1830年末)までに書かれたものとされる。他の初期のマズルカと同様、簡素な楽式による、より実用的なマズルカの雰囲気を持っている。
変ロ長調に転調した中間部では、変ロ音とへ音上で奏でられる空虚5度の上で、第4音を半音上行させたジプシー的な音階が響き、民族的な香りが強く漂う。また、他のマズルカにはあまりみられない特徴として、この部分に「Poco piu mosso」と速度の変更が指示されていることは興味深い。マズルカは、マズル、オベレク、クヤヴィアク、クラコヴィアクなどポーランドの様々な民族舞踏の要素が取り込まれたものとされるが、これらの舞踏には共通したリズム音型があるため、リズムだけで舞踏の種類を断定することは出来ない。その一方で、テンポの緩急はそれぞれの舞踏に特徴的な要素であり、速度が変更されることで、舞踏の種類が変わったことが、ここでははっきりと示されたといえる。急速なテンポと、回転を感じさせる音型から、この中間部がオベレクの特徴を持っているといえる。
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