ベートーヴェン :ピアノ・ソナタ 第5番 第1楽章 Op.10-1

Beethoven, Ludwig van:Sonate für Klavier Nr.5 1.Satz Allegro molto e con brio

作品概要

楽曲ID:22955
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:6分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展1 発展2 発展3 発展4 発展5

楽譜情報:3件
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解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1246文字)

更新日:2019年12月20日
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ベートーヴェンはこのソナタを書く前に、同じ調のピアノトリオを書いています。c-mollという調もベートーヴェンにとって特別な調だったのでしょうか。彼のc-mollのピアノトリオは30分弱の大曲になっています。このソナタもやはりピアノトリオや弦楽四重奏が背景にあると考えます。

このソナタに限らず、ベートーヴェンのソナタを弾くときには特に注意しなければならない事があり、それは器楽が背景にあった時代の所以です。例えば1小節目、1拍目にフォルテの和音があり、そのすぐ後に16分休符があります。学習者の中にはこれらの休符を無視する学習者もいますが、ベートーヴェンの休符は大事です。正確に休符を守って下さい。

最初の和音の後に、16分休符が来て、その後に付点のリズムのパッセージが来ると言うことは、最初の和音を弾いた数名の奏者と付点のパッセージを演奏する奏者は別(同じだとしてもソロ)で、付点の部分はソロのヴァイオリンのパートと考えます。

そして3小節目3拍目から4小節目にかけて弦楽四重奏と考えます。5小節目、もう一度複数の奏者が和音を弾き、再びソリストが付点のリズムを奏でます。7小節目3拍目より再び弦楽四重奏が12小節目まで続き、ベートーヴェンの得意とする突然のフォルテが13小節目から始まります。ここはピアノトリオの部分かもしれません。

ミステリアスな3連符が17小節目から始まり、22小節目で再び1小節目のドラマが再開されます。30小節目までが1つのセクションと考え、32小節目から新たなセクションと考えますが、典型的な問題点として、30小節目までのカウントを怠る学習者が多くいます。つまり、3拍子で数えることを忘れてしまっている学習者、特に17小節目から始まる3連符+4分休符など、きちんと拍を感じ、認識しなければなりません。もちろん1小節目からきちんと3拍子を感じて演奏してください。

拍の認識を怠る原因としては、この楽章が allegro moltoであるため、大雑把にフレーズを捉えがちになるからです。塊でフレーズを感じるのではなく、常に3拍子を感じるようにします。

32小節目より、再び弦楽四重奏が始まると考えます。もしもこれをお読みになられている方が教師の方であれば、生徒の多くは弦楽四重奏さえ知らない事もあります。是非どのような音楽かを聴かせてあげてください。そしてその上で、チェロとヴィオラが32小節目から先のヘ音記号を奏でたとき、和音の移り変わりにアタックが全くないことを教えてあげて下さい。

これがピアノ奏法のむずかしさであるのですが、ピアノは和音が変わる時にどうしても伴盤を新たに弾かなければならなく、故に、アタック音を避ける事ができません。結果、縦割りの音楽に聞こえてしまい、横に流れない音楽になってしまいます。この32小節目以降などは典型です。1拍目に和音が来るだけなので、どうしてもそこにアタック音が来てしまうのですが、できる限りスムーズに横に流れるよう、工夫してみて下さい。

執筆者: 大井 和郎