第2番 ハ短調 バッハのc-mollは、パルティータ、平均律1巻、2巻、などを見る限り、決して寂しさや悲しみの表現ではないと思います。故に、この2番のインベンションをどのように演奏しようと、これもまた自由ではありますが、音楽的に演奏する工夫も含め、演奏のヒントを述べていくことにします。 まずトリルの話になりますが、2小節目、4拍目に出てくるような、後ろの音符が32分音符などの細かい音符で書かれてあるトリルは、トリルをその音符まで弾き続けます。途中で止めないようにします。そうすると、このトリルの速度は32分音符の速度と仮定して構わないと思います。 3小節目、3拍目、トリルはGに書いてありますので、GとAsのトリルになりますが、問題は、どちらの音から始まるかという問題になります。多くの場合、後ろの音と異なった音からトリルを始めるマナーがあります。つまり、2拍目の最後の音はGで終わっていますので、3拍目のトリルでGかAsかの選択がある場合はAsから始めるようにします。 そうすると、Asからトリルを始めた場合、実音のGでトリルを終わらせるためには、偶数で無ければGに行きません。故に、Asから4つ、As G As G とトリルを入れます。そしてこれらのトリルは後に左手にも出てきますので、指導者の皆様は、これらのトリルの難易度を鑑みた上で、学習者の皆様が無理なくトリルを入れられるテンポに設定されれば良いでしょう。 次に2度の下行形についてお話しします。3小節目、3拍目右手の、G-Fや、4小節目、1拍目右手のF-Esなど、全ての2度の下行形は、サスペンション(非和声音)を含んでいます。つまりは、1つ目の音は、前の拍から引っ張ってきている音で、非和声音になり、2つ目の音で解決されます。故に、2つ目の音にはアクセントを付けないようにしなければなりません。 その他、和音の解決部分はその小節の1拍目などに来る場合が多く、注意しなければなりません。 例えば、4小節目、4拍目は、BDFAsという属7の和音であり、それは次の小節の1拍目に於いて、EsGBという和音で解決されます。従って、4小節目、4拍目の右手 AS F B F は、次にGに行きますので、このGにアクセントは付きません。ほぼ消えるようにGに達します。むしろ裏拍のEsに力が入ります(力が入るというのはここをフォルテシモにしてくださいという意味ではありません、ストレスがEsに行くという意味です)。 以降、同様に、このような和音の解決部分にはとくに注意を払い、解決音にアクセントが付かないようにします。 ゆっくり、レガートで演奏しても良いとも思います。曲は、C-moll、Es-dur、G-moll、などに転調します。各調の雰囲気を異ならせ、平坦にならないように演奏します。