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ドビュッシー :子供の領分 グラドゥス・アド・パルナッスム博士

Debussy, Claude Achille:Children's corner "Doctor Gradus ad Parnassum"

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:2分00秒
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解説 (1)

解説 : 林川 崇 (922文字)

更新日:2019年4月18日
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グラドゥス・アド・パルナッスム博士

ここで博士の名前になっている「グラドゥス・アド・パルナッスム」とは「パルナッソス山への階梯」という意味で、クレメンティ練習曲集に使われたタイトルである。ギリシャの最高峰として実在するパルナッソス山は、神話では芸術の女神ミューズたちが住むとされている。

一般にこの曲は、指の練習に退屈する娘を描いた、ないしは退屈な指の練習を揶揄したと解釈される。それにはドビュッシー自身による「これは健康のため、上達のためのエクササイズです。毎日朝食前に、最初はmodéré(中庸に)で、慣れてきたらanimé(生き生きと)で弾くべきです。」という言葉も影響しているだろう。ただしこれは、自筆譜に書かれていなかったテンポを尋ねる出版社デュランからの手紙への回答として書かれたものであることからも、ドビュッシー流のウィットと取るほうが自然なように筆者には思える。また、実際のクレメンティの「グラドゥス」は、単にメカニックの練習にとどまらず、表現に重点が置かれた曲(第39曲「悲愴的情景」など)や、フーガなども含まれる総合的な教材である点についても、ここで念を押しておきたい。

曲はクレメンティよりはむしろ、若き日のドビュッシーに影響を与えたとも言われる作曲家ステファン・ヘラーの、「25の旋律的練習曲」Op.45の第1曲と書法や曲調が酷似している。「ゴリウォーグ」における「トリスタン」の引用とは異なり、これがヘラーからの借用であることを示す根拠はないが、この練習曲集自体が当時のフランスでも知られていたことや、偶然かもしれないがヘラーと同一の旋律が現れることから見ても、完全に否定することは出来ないだろう。

ヘラー:25の旋律的練習曲Op.45 第1曲冒頭

「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」第3~5小節

(ヘラーと同一の旋律が左手に現れる)

ヘラー:「25の旋律的練習曲」Op.45第1曲第9~11小節

「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」第63~65小節

執筆者: 林川 崇