この曲は、この練習曲集の中でも特に音楽的に大変難しい曲です。技術面はそれほど困難では無いと思いますが、音楽的に聴かすには工夫が必要です。
まず、1ー6小節間の各3拍目の左手のアーティキュレーションをどのように処理するかという課題があります。これをスタッカートとして切るか、セミスタッカートとして扱うか、ペダルを入れるか、で、雰囲気は相当変わってきます。教師の皆様は生徒さんと相談の上決めていきましょう。
次に、右手の奏法になりますが(9-10、13ー14小節間は左手)、32分音符の弾き方も大事です。筆者も2日間にわたってこの曲を弾いてみましたが、これらの32分音符を機械的に、コンピューターのように処理すればするほど、曲は硬くきこえます。コツとしては:
1 可能な限りppでleggieroで弾く
2 次に待っている8分音符も一緒に考え、32x4+8x1の5つの音符を一気に弾く。
3 たとえば1ー2小節間の1拍目表拍は8分音符から始まりますが、この8分音符を実際よりもほんの少しだけテヌートをかけ長めに伸ばします。そしてその分だけ32分音符を詰めるようにします。
つまり実際の32分音符の早さよりも幾分早めに演奏されることになります。
気をつけるのは 3 で、あまりこれがあからさまになってもいけません。気づかれない程度にほんの少し、表拍を長めに、裏拍を短めに演奏します。そうするとスムーズにきこえます。
11小節目に書かれているcresc は、12小節目に書かれてあるフォルテに向かうことは分かるのですが、和声的には解決和音になります。12小節目の1拍目、表拍の和音を11小節目より大きくするか、小さくするかは好みの問題になります。
この曲は一貫して、dolceでpで演奏する曲かも知れません。12小節目にフォルテと書かれてあってもそこまで大きくはしないかも知れません。
前半、8小節間で唯一、ほんの少しだけテンションが上がり、音量が上がるのは5小節目のみです。あとは、基本的にpを守り、優美な、優雅な感じを出します。