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クレメンティ :段階的な6つのソナティナ 第4番(ソナチネアルバム第10番) Op.36-4 ヘ長調

Clementi, Muzio:6 Progressive Sonatinas No. 4 F-Dur Op.36-4

作品概要

楽曲ID:18311
出版年:1797年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナチネ
総演奏時間:6分10秒
著作権:パブリック・ドメイン
※特記事項:1820年に一部改訂。 アウグスト・リーデル編曲による2台ピアノ版あり
原曲・関連曲: 曲集・オムニバスソナチネ・アルバム1

解説 (1)

演奏のヒント : 秋山 徹也 (1960文字)

更新日:2018年3月12日
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第1楽章 ■対話・転回・反復などの技法が巧みに用いられる、3部分からなるソナタ楽章 主題の対比・展開の手法などを意識して表現するとよい  淡々とした低声トレモロ上に始まる第1主題と、スタッカート主体で対話の要素が取り入れられた軽快な第2主題とが対比されて多彩な展開を繰り広げる、提示部・展開部・再現部の3部分から成るソナタ形式の楽章である。展開部は、転回・ 反復(ゼクエンツ)などで構成され、再現部で第1主題、第2主題ともに多少の変化を伴って再現をする構成である。 ■主題内で変形をみせる第1主題と対話の要素がみられる第2主題からなる提示部  同音連打の低声が特徴的な第1主題と、1小節単位で上下の声部が呼応する第2主題が対置される。さらに各主題内でも、対照的な動きがある。第1 主題は、淡々と低声が刻まれる前半4小節と上下声部に動きのある後半4小節が対照的である。前半と後半の対照を表現するのも面白い。この第1主題は9小節目~で確保されるが、前半はほとんど同じ形であるのに対し、後半は推移しながら(Ⅴ度調への転調を伴いながら)動いている。安定と変化を表現するのも面白い。  一方、スタッカートと18小節と19小節とでの対位法的な掛け合いが特徴的な第2主題は、20小節と21小節で、さらに確保風の23小節と24小節とで、繰り返されることによって印象づけられている。ただし、23小節~では18小節の主題上声部が転回され、19小節の低声は1オクターブ下で利用されるなど、変化している。繰り返しによる印象づけと、変化による音楽の違いの両方がわかるように表現するとよい。28小節~の小結尾(コデッタ)では、第1主題5、6小節目のバス音形を配して、第1主題をも想起させつつ、常に上行する音階を配して提示部のクライマックスにしている。 ■両主題の素材がからみあって進行する展開部  展開部では多彩な展開技法が用いられる。31~33小節では、第2主題のリズムが(大きく見ると)ヘ長調のⅤ度上で2度ずつ3段階に上昇し、後の展開に少しずつ向かってゆくように始まる。34小節~では、ニ短調のⅤ度とⅠ度が交替する和音上に配され一気に緊張感が高まる。その際、下声は第1主題のリズム、上声は第2主題リズム最初の部分をもとにした素材を組み合わせられている。35小節では、34小節3拍目のリズムを連用し、バスの各拍頭は2度上行して2声体の動きをして繰り広がる感じを表している。さらに、36小節と37小節では、34~35小節の反復を基本にしているものの、36小節の3拍目の方が前より大きく跳躍しているのと、37小節上声の音形は、35小節各拍の音形を変化させて用いるなど細かく変化している。38~41小節の2小節単位のゼクエンツによって少し経過的部分が挟まるが、42小節ではバスを再び同音連打の連用に戻し、右手も同音形の連用にしたうえで、同時に主調ドッペルドミナント(ハ長調のⅤ度)に転調している。短調の悲しい雰囲気から一転して一気にクライマックスに向かう感じを表現するとよい。43小節~45小節では、ヘ長調のⅤ度保続上に、上声部が16分音符の上行音形で連用されてクライマックスに向かい、45小節では最高音域に達した旋律がⅤ度上で連用されてピークに達している。多彩な展開の動きに応じた表現を考えるとよい。 ■提示部の再現を基調にしながらも一部異なる形で再現され、変化に富む再現部  再現部は提示部に準拠しているが、多少変化している。曲頭の提示部と同じ形で始まる(48小節~)が、提示部の9~12小節に相当する確保部分が省略され、52小節でIV度調(変ロ長調)に立ち寄るため回想的な雰囲気が、55小節ではII度調(ト短調)に立ち寄るため、ほろっとした感じがある。それを(提示部にはなかった楽節の)56小節~57小節の動きによって、回想感やほろっとした感じが一気に吹き飛ばされる形になっている。52小節~、55小節~の雰囲気を一気に変えて、もとの曲調に戻すような表現が考えられるであろう。  59小節~では第2主題が再現される。最初の2小節は提示部とほぼ同様の形がヘ長調で再現されるが、後半の2小節は上声部が転回された形で用いられている(提示部では確保部分に用いられた形)。また、64小節からの確保風部分では、59小節からの部分を1オクターブ上で再現し、66小節では61小節と同様に上声部は転回されるなど変化している。69小節からの結尾(コーダ)では、28小節からの部分とは正反対に、音階の向きを逆向きの下行音形で対照的に用いて曲を終えている点もおもしろい。解決に際して、「転回」が上手に利用されている。これらの変化を何らかの形で表現しわけるとよいであろう。

執筆者: 秋山 徹也

楽章等 (3)

第1楽章

調:ヘ長調  総演奏時間:2分30秒  ステップレベル:応用3,応用4,応用5,応用6,応用7

解説0

編曲0

第2楽章

調:変ロ長調  総演奏時間:1分50秒  ステップレベル:応用3,応用4,応用5,応用6,応用7

解説0

編曲0

第3楽章

調:ヘ長調  総演奏時間:1分50秒  ステップレベル:応用3,応用4,応用5,応用6,応用7

解説0

編曲0

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