ソナタ形式の第1楽章は極めてシンプルな構造をとる。呈示部の形式は、属調に半終止した後に属調の平行調へ転じ、多くの調を迂回すること、副主題が長調ではなく短調で始まること以外はほぼ型通りである。展開部も26小節と短く、前半はコデッタの楽節、後半は楽章冒頭2小節を含む楽節のゼクエンツから成る。ゼクエンツが主調に至るとそれがそのまま再現部の開始となる。
本楽章では、静と動の転換が全体にメリハリを与えている。例えば主要主題群ではターン動機と跳躍上行から成る躍動的な主題に、順次進行中心のより抒情的な主題が続く。推移部の急速な音階下行の連続と、伴奏の無窮動のリズムやシンコペーションを特徴とする活発な副主題の間にも、息の長い、対位法的なフレーズのゼクエンツが挟まれる。終結主題では二音の保続音がゆったりとした性格を与え、リズム、副主題由来のスタッカートの刺繍音、高音の導音進行により高い緊張感を持つコデッタと好対照を成す。
緩徐楽章は活発な第1楽章と対照的な優美な性格。本楽章では全主題が主旋律を担う楽器を交替して繰返され、その際に2つの楽器を併せた表現の可能性が試されているようだ。例えば短調主題の4小節(17小節~)は、声部進行に大きな変更はないが、声部の交替や楽器の有無により呈示部だけで4通り、再現部ではト音の同音反復がトリルになり、更に新たな形で繰返される。またホ長調主題の伴奏の重音奏法や分散和音(67小節~)は繰返し前より響きを豊かにしている。
終楽章はロンド形式。一定の音域内を駆け巡る主題の音形は第1楽章のターン動機を思わせる。16分音符の無窮動的なリズムに加え、両楽器の関係が、声部の交替、反行、平行、動機の呼応など様々に目まぐるしく変わることも、音楽の流動性の一因だろう。
冒頭主題は分散和音と音階というありふれた音形で構成され、これが楽章全体を支配する。また装飾を伴う旋律の上行音形(5小節)も変形してエピソードに含まれる(ex. 57小節~、117小節~)。こうした素材の限定が楽章全体を統一する反面、主題再現の際の調の多様性(ハ長調、ロ長調、変ホ長調)や伴奏音形の変化が冗長さを防いでいる。なお第1番と第2番に見られたナポリ調への関心は、コーダにおける属調のナポリ調、変ホ長調への転調にも現れている。