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ベートーヴェン :ヴァイオリン・ソナタ 第6番 Op.30-1 イ長調

Beethoven, Ludwig van:Sonate für Klavier und Violine Nr.6 A-Dur Op.30-1

作品概要

作曲年:1801年 
出版年:1803年 
初出版社:Bureau d'art et d'industrie
献呈先:Czar Alexander I of Russia
楽器編成:室内楽 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:23分00秒

解説 (1)

執筆者 : 丸山 瑶子 (1624文字)

更新日:2011年7月7日
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作曲期は1801~02年の春。Op. 30はロシア皇帝アレキサンダー1世へ献呈されているが、作曲動機などの詳細は不明。なお本作品の元々の終楽章はOp. 47に転用され、本作品用には新たな終楽章が作られた。

第1楽章の形式は作曲家が同時期に試した実験的なソナタ形式とは対照的に極めて慣習的。呈示部の特徴は音楽の性格の多彩さだろう。冒頭主題は甘美で、主調の安定を揺らがせる半音進行が一層の彩りを添える。半音の響きは移行部(19小節~)にも残る。移行部の前半は冒頭動機に基づき、後半は少しの間、跳躍音形の繰返しによるヘミオラとなる。副主題の第1楽想は伴奏の流れるようなリズム、主旋律のシンコペーションなどにより主要主題とは対照的な軽やかさを持つ。第2の楽想は、伴奏和音のリズミカルさ、前打音を伴う動機のつま弾き、平行短調の開始が、それ以前の優美な音楽にはない新鮮さを感じさせる。コデッタでは副主題群第2楽想に基づく下行音階の繰返しが拍子感をやや不明瞭にするが、それも束の間で音楽は下行音階をアウフタクトとしてごく自然に規則的な3/4拍子のカデンツへ至る。

展開部では楽章冒頭の分散和音動機の畳みかけ、副主題の第1楽想の挿入に続いて、副主題第1楽想の変奏によるカノンとなる。その後、副主題群第2楽想と同じ16分音符の装飾音形と第1楽想の旋律動機の組合せ、移行部の跳躍動機(8分音符となり両手に分散される)上での楽章冒頭動機の繰返し、終結主題の上行音階というように、既出の動機が次々に活用される。展開部の最後では低音が2度上行を繰返し、徐々に主調を準備する。

再現部は型通りでコーダもごく短い。主音が保続される間、ヴァイオリン、ピアノに加え両楽器の平行3度で冒頭動機が強調され、冒頭2小節の再現を挟んでヴァイオリンが冒頭動機を最後に再度確認し、楽章が終わる。

緩徐楽章はABACA’コーダのロンド形式。前半の伴奏は付点リズムの下行音形が支配的。同じ音形がコーダの終わりに再現することで楽章が円環的構造となっている。

この楽章は主題間の関連が注目される。BとCの旋律は小節前半に付点リズムで一方向へ進み後半で同音反復となる点でAと共通する。Bの低音の付点リズム(17小節)や、Cで下行音形2回とシンコペーションに続いて旋律が上向くという構造もAと通じる。

また各素材は音楽が進むにつれて発展的に用いられている。例えばBでは僅か1小節だった3連符はCで両楽器の応答により拡大する。C前半の旋律的な6連符の分散和音は、その後伴奏の基本音形となる。

更に各素材はA’とコーダで統合される。A’の伴奏はCの6連符や先述の3連符を連想させる。A’のピアノの主題旋律には冒頭の付点リズムが入り込み、コーダで付点リズムと3連符が絡み合う(83小節~)兆しかと思わせる。Aでのsfの強調を考えるとAの低音とコーダの刺繍音形も関連する可能性がある。

第2稿である終楽章は、第2、第3変奏が先に構想されており、そこから主題が作られたという。8分音符の流れに乗った明るい主題は16小節の大楽段2つから成る。両楽器の絡み合いは変奏が進むにつれ密になる。第1変奏はピアノ、第2変奏はヴァイオリンが主体。第3変奏は両楽器のリズム動機の模倣(但し完全な模倣ではない)を基調とし、両楽器の平行が楽節を繋ぐ。第4変奏はヴァイオリンの和音進行とより旋律的なピアノの応答。イ短調の第5変奏は3つの声部進行がポリフォニックに絡み合う。この変奏はアルブレヒツベルガーの下での学習期間に書いたフーガとの類似も指摘されている。最終変奏への移行部は主題由来の動機に基づく。なお移行部にあるナポリ調への転調(129小節)は第2番にも通じる。最終変奏は6/8拍子の主題の華やかな装飾変奏。コーダ(183小節~)では、カデンツのトリルという第6変奏との共通性、旋律の模倣的な入りや間隔の短い応答などの両楽器の密な関係に注目したい。

執筆者: 丸山 瑶子

楽章等 (3)

第1楽章

総演奏時間:7分20秒 

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楽譜(0)

第2楽章

総演奏時間:7分40秒 

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第3楽章

総演奏時間:8分00秒 

解説(0)

楽譜(0)