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クリューガー 1820-1883 Krüger, Wilhelm

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  • 解説:上田 泰史  (1806文字)

  • 更新日:2020年4月12日
  • 1820年、ヴュルテンベルク王国の首都シュトゥットガルトに生まれる。彼の父(1790, ベルリン~1868, シュトゥットガルト)ばヴュルテンベルク王国宮廷礼拝堂付のフルート奏者だった。エルンスト・パウアー(1826~1905)によれば、クリューガーがピアノを師事したのはツィーゲレC. Ziegeleという教師で、作曲の師はリントパイントナーPeter Josef von Lindpaintner(1791~1856)であった。後者は1919年から没年までシュトゥットガルトの宮廷楽長を務めた人物であり、クリューガーの父の上司という位置づけになる。彼には4歳下の弟がおり、ハープ奏者として父と同じ宮廷に仕えた。

    ヴィルヘルムは若くしてピアニストとしてドイツ各地を旅行したのち、1845年にパリに移住。この都市でヴィルトゥオーゾ、教育者として名を馳せた。デビュー当時の様子を、パリ音楽院教授マルモンテルは次のように述懐している。

    デビュー当時から、フランスの雄々しき精鋭たちのなかで、彼はきわめて正確なリズム、力強さと走句の色彩、活気と若さの熱気によって際立っていた。当時の彼のヴィルトゥオジティに賭けていた者と言えば、[表現の]多彩さと強弱nuancesの魅力であった。引き締まり、堂々とした彼の演奏は、ドイツのピアニストたちの権威を十全に示していた。だが、パリ滞在によって、やがて彼は繊細さと趣味を手にした。それらは、この大都市パリのまさに本質であり、漂う空気感、すなわち紛うかたなき雰囲気なのである。

    第二帝政時代のパリにおける大衆的名人気は、ベッリーニアレヴィヴェルディらのオペラに基づく幻想曲に負っていた。それらにおいて、彼は装飾で飾り立てることよりも、彼の演奏における明瞭さ、粒立ちの良さを聴かせながら、動機を展開する手腕、内声を豊に響かせる書法、対位法的な線を際立たせている。響きは全体としてシンフォニックで、やや陰りのある懐古的な劇場の雰囲気を漂わせている。このジャンル以外にも、彼は《交響的なメヌエット》作品57《ピアノ・ソナタ》作品100(ハ長調)のような古典的作品、パリ音楽院の認可を受けた《24の練習曲》作品145(ジョルジュ・カストネルに献呈)のように技巧とドラマティックな表現を要求する作品も出版している。いっそう教育的な作品では、《週の六日》作品32(「わがの生徒たちに」献呈)と題するピアノ教本があり、これもパリ音楽院の認可を得ている。クリューガーは作品8と9をカルクブレンナーに献呈しており、初期にはこのパリの名教師との交流があったようである。前述のメソッドには、指の独立の訓練の課題が収められており、演奏における身体の活用を手首と前腕までに留めている点で、カルクブレンナーの演奏美学を受け継いでいる。サン=サーンスが「指の独立」の練習曲を彼に献呈したのも、彼は和音を構成する一つ一つの音を異なる音色で演奏することを可能にする、指の完璧なコントロールに長けていたからであろう。

    クリューガーは社交的な文化人としても人々の厚い信頼を得た。彼が創設したドイツ慈善協会は、独仏の音楽家交流促進の一翼を担った。当時パリであまり知られていなかったシューマンブラームス作品の演奏は、とくに注目に値する。彼自身、1856 年に亡きシューマン《ピアノ三重奏曲》作品 63 のパリ初演に参加している。フランスのピアニスト兼作曲家たちからの信頼も厚く、サン=サーンスは、彼に《6 つの練習曲》作品52 第2番〈指の独立のために〉を献呈した。ドイツのバロック時代の普及にも強い関心を持ち、ヘンデルのチェンバロ曲全集を自らの手で編纂し出版した。

    1870年に勃発した普仏戦争を機にドイツ慈善協会は解散を余儀なくされ、他の多くのドイツ人作曲家たちと同様、帰国の途についた。ヴュルテンベルク王国に戻ったクリューガーは、父がいた宮廷に仕え、また同地の音楽院で教鞭を執った。同地の音楽でも、彼は自身が編纂したヘンデルの曲集を教材に用いたほか、同音楽院の創設メンバーであるピアニスト、レーベルトSigmund Lebert(1821~1884)、シュタルクLudwig Stark(1821~1884)の名高いメソッド《理論的・実践的大ピアノ教本》にも練習曲を一曲提供した。1883年、62歳で同地に没した。

    執筆者: 上田 泰史 
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    解説 : 金澤 攝 (250文字)

    更新日:2010年1月1日
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    作品(144)

    ピアノ協奏曲(管弦楽とピアノ) (1)

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