吉松隆は、現代音楽に特有の「わかりにくさ」から解放された作曲家である。無調性、希薄な拍節構造こそが定番として見なされる現代音楽のなかで、吉松の音楽は際立って調性的であり、また独特の変拍子を採用した極めてリズミックな作風を展開している。
プレイアデス舞曲集もやはり調性感や、教会旋法による神秘的で透明感のある響きが特徴的。抒情性や躍動感に溢れた一曲一曲は、演奏するにしても鑑賞するにしても楽しい作品だ。だが決して「わかりやすさ」ばかりに迎合するような作品ではない。小節ごとに変化する拍子や、不規則的な音の運びが、繊細なまでに設定されており、耳に心地よく響く完成度の高い演奏には、洗練された技術とセンスが必要だろう。
この曲集は一巻あたり7つの小品からなる。第一巻目であるOp.27はD音中心のドリア旋法が支配的で、全体に哀愁の漂う優しい歌で構成されている。(1、フローラル・ダンス、2、ほぼ2声のインヴェンション、3、アップル・シード・ダンス、4、水によせる間奏曲、5、リーフレット・ダンス、6、ほぼ3声のインヴェンション、7、プラタナス・ダンス)