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ローゼンブラット :トロイメライの夢

Rosenblatt, Alexander:Dreams of Traumerei (Dreaming)

作品概要

楽曲ID:78380
作曲年:2020年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:種々の作品
総演奏時間:3分00秒
原曲・関連曲: シューマントロイメライ ヘ長調

解説 (1)

解説文 : 加藤 麗子 (1234文字)

更新日:2022年5月8日
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シューマンの最もよく知られたピアノ曲集『子供の情景 Op.15』より第7曲「トロイメライ」のジャズアレンジ。ローゼンブラットのピアノの師匠であり偉大なるピアニストのPavel Messner氏に捧げられた。

原曲シューマン「トロイメライ」のテンポはModerato(モデラート)で、本作品の完成当時はローゼンブラット本人もそのテンポで演奏していたが、出版された楽譜の指示はLento(レント)に設定されており、これには「トロイメライ」の緩やかさをより強調する思惑があったものと思われる。

本作品タイトルの日本語訳については少し悩んだ。私が出版前に彼から渡された楽譜のタイトルは「Dreams of Toraumerei」となっていたが、Schott社の出版譜(電子媒体)は「Dreaming」との表記になっている。ローゼンブラットによれば「Schott社がタイトルを変えてしまった」との事。この事はセールスの都合かも知れないが、芸術を、人間の気持ちまでも歪めてしまっている様で居た堪れない。本稿の英語タイトルでは、作曲者ローゼンブラットの芸術的意図を正確に踏まえるため、作曲者本人から託された楽譜のタイトル「Dreams of Toraumerei」を採用した。そして日本語タイトルについて、ドイツ語「Träumerei」は「夢想」の意なので英語「Dreams of」と合わせて直訳すると「夢の夢」となってしまい言葉の重複だが、ローゼンブラットは掛詞の様な英語の洒落を好む。よって最終的に「トロイメライの夢」と日本語訳するのが適当と判断した。

本作品の調性は原曲「トロイメライ」と同じへ長調で、明るくゆったりと展開される。冒頭のメロディはローゼンブラットが「ジャパニーズ・ファンタジー」でも登場させた「赤とんぼ」の冒頭と同じく“ド→ファ”と跳躍する音程で始まり、この2音は日本人のみならず世界中の人がたまらなくノスタルジアを覚える。また全体を通して長七の和音(Major 7)が加重されJazzyな雰囲気を作り出している。

演奏時間は3分とコンパクトにまとまった小品で、また難易度も手頃である。今後コンサートのアンコール曲等として取り上げられる機会が増える事が期待される。(筆者の友人は早速結婚式にて披露した。)

シューマンについての資料を集める時点で気が付いた事だが、シューマンのミドルネームはローゼンブラットのファーストネームと同じ「Alexander」。歴代の作曲家とのシンパシーを大切にするローゼンブラットの事だ、シューマンに霊的な結び付きを感じていた事であろう。原曲「トロイメライ」から切り離されたただの「Dreaming」=「夢」ではこの作品の深遠な奥行きを見落としてしまう。筆者はローゼンブラットによるシューマンへの返歌としての気持ちが込められた前タイトル「Dreams of Toraumerei」によって、この作品の正当な価値が浮き彫りになるものと考えている。

執筆者: 加藤 麗子

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