清瀬 保二 :4つの前奏曲
Kiyose, Yasuji:Four Preludes for piano
楽曲解説 : 長井 進之介 (507文字)
清瀬保二の作品は、初期においてはドイツ・ロマン派主義的作風を基礎としていたが、やがてそこに疑問を感じるようになり、独学で作曲の勉強をするようになると、印象主義からの影響を多く受けるようになっていく。さらに彼は自身の作品の中に日本の五音音階を意図的に駆使し、日本人の感覚に馴染みやすく、また技巧に頼らない作曲を続けた。まだ日本が終戦後の荒廃と混乱にあった時に書かれた《4つの前奏曲》は、戦前の彼の作風とは変化を見せており、使用される音の数は増え、「曲想の変化とヴァイタリティに富んできた」曲となっている。この前奏曲集は、作曲者本人が「戦後のやる方ない感じを書いたもので、この気持ちからこれら前奏曲集が出来たと云えよう」と語っているように、美しくも、終始とりとめのない様子で流れていく第1曲で開始され、その暗示を受けた、「神秘的な静けさや、詠嘆を秘めている」第2曲や第3曲へと続いていく。最後を飾る第4曲は「終戦後のいろいろな不安定からくる焦燥」で開始し、「戦死者への哀悼」と「焼け出された人々への同情」であるラメントーソの中間部を経て、「再び不安と焦燥に帰るが、再建を期して力強く終わる」フィナーレへと向かっていく。
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