ベートーヴェン :第2番 第1楽章
Beethoven, Ludwig van:WoO.47-2 Mov.1 Larghetto maestoso - Allegro assai
解説 : 鐵 百合奈 (439文字)
ヘ短調、2分の2拍子 - 4分の4拍子。嘆きに満ちたアルペッジョがfで奏されたあと、全てを諦めて力なく呟くようなパッセージがpで続く。そして、地の底を模したかのごとく最低音域でうごめく左手の上で、右手が這い上がろうともがきながら上行するが、思い叶わず落ちていく。たった9小節の序奏は、さまざまな種類の絶望と恐怖に彩られている。
第10小節目からアレグロ・アッサイとなり、心の枷をはずしたように感情の渦が流れ出す。
副主題(第18小節~)は、平行調である変イ長調に転じる。
展開部(第37小節~)は初めこそ変イ長調だが、すぐさま短調に陰り、激情を発露していく。第47小節で冒頭の序奏が回帰する(この構成は後のピアノ・ソナタ《悲愴》において結実する手法である)。このあとふたたび急速なアレグロ・アッサイに戻り、主要主題と副主題がともに主調のヘ短調で再現される。
[CBJ 2020]ベートーヴェン:選帝侯ソナタ 第2番 WoO.47-2 Mov.1