ベートーヴェン :3つのピアノ・ソナタ(「選帝侯ソナタ」) 第2番 WoO.47 ヘ短調

Beethoven, Ludwig van:3 Kurfürstensonaten  WoO.47-2 f-moll

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:11分00秒

解説 (1)

解説 : 鐵 百合奈 (1323文字)

更新日:2020年1月18日
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2 ヘ短調 WoO 47-2

冒頭楽章に序奏部を持つ、悲愴に打ち沈んだヘ短調によるこのソナタは、三曲からなる選帝侯ソナタの中で最も秀でているばかりか、ベートーヴェンがボン時代に作曲したものの中でも最重要曲のひとつである。ハイドンとモーツァルトのクラヴィーア・ソナタに短調のものは少なく、またヘ短調のものはないため、この調選択は特異に感じられるが、師ネーフェを通じてC. P. E. バッハのクラヴィーア・ソナタに親しんだベートーヴェンにとっては、それほど異例の選択ではなかったと考えられる。

 

 

第1楽章 Larghetto maestoso - Allegro assaiラルゲット・マエストーソ - アレグロ・アッサイ

ヘ短調、2分の2拍子 - 4分の4拍子。嘆きに満ちたアルペッジョがfで奏されたあと、全てを諦めて力なく呟くようなパッセージがpで続く。そして、地の底を模したかのごとく最低音域でうごめく左手の上で、右手が這い上がろうともがきながら上行するが、思い叶わず落ちていく。たった9小節の序奏は、さまざまな種類の絶望と恐怖に彩られている。

第10小節目からアレグロ・アッサイとなり、心の枷をはずしたように感情の渦が流れ出す。

副主題(第18小節~)は、平行調である変イ長調に転じる。

展開部(第37小節~)は初めこそ変イ長調だが、すぐさま短調に陰り、激情を発露していく。第47小節で冒頭の序奏が回帰する(この構成は後のピアノ・ソナタ《悲愴》において結実する手法である)。このあとふたたび急速なアレグロ・アッサイに戻り、主要主題と副主題がともに主調のヘ短調で再現される。

 

2楽章  Andante アンダンテ

変イ長調、4分の2拍子。主要主題は、第1楽章の副主題の後半(第2021小節)を反転させたもので、第1番と同様に、この2番でも楽章間に統一性が図られている。

副主題(第19小節~)は属調の変ホ長調に転じ、右手のパッセージには細かくアーティキュレーションが施され、トリルで飾られている。若年にして綿密な彫琢が美しい。展開部(第41小節~)は主要主題を転回したものをヘ短調で展開し、左手に現れる深刻な表情「ため息音型」や、不安を煽る同音連打が、深い苦悩をあらわす。再現部(第61小節~)では主要主題の再現は省かれ、副主題が主調の変イ長調で再現され、最後に主要主題によるコーダで終わる。

 

3楽章 Presto プレスト

ヘ短調、4分の2拍子。主要主題はユニゾンで、流れる涙もそのままに歩み続けていくさまを想像してしまう。気丈で強く振舞っているゆえに、切ない。16小節からなる主要主題は、続く反復では1オクターヴ上で、旋律も多少変奏されながら、左手にアルベルティ・バスの伴奏を伴う。副主題(第33小節~)は変イ長調で、第45小節目以降、30小節間にもわたる長大なコデッタが続く。その後、主要主題が変奏されて出現するため、展開部かと惑わされるが、これは再現部であり、展開部は省略されている。反復も含めると提示部では32小節を占めていた主要主題は、再現部ではわずか10小節に短縮される。これに対して、副主題以降は完全な形でヘ短調によって再現される。

執筆者: 鐵 百合奈

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