メラルティンはフィンランドの作曲家で、シベリウスと同じように祖国フィンランドの風土を抒情的に表現した作曲家である。
本作品は、小品ではあるものの、そうしたメラルティンの作風が垣間見れる作品となっており、タイトル「うた」の通り、長いフレージングによる旋律が大きな特徴となっている。
一部形式
a (1から4小節)+ a1(5から8小節)
全体の構成としては4小節の主題が提示され、続く4小節で主題が変形展開し終結へと導く。シンプルな構成となっている。
主題は上行形と下行形の二つの動きで構成されている。冒頭上行形の頂点に属7和音を置くことで緊張のピークを作り出し、下行形の終わり、4小節目でⅠ主和音をもって全終止と成す。ただ、2小節目4拍目は上行するアウフタクトであり、4小節全体としては一つの山形の流れでありながら、後半2小節でも上下行の動きを汲み取って、軽くフレーズの膨らみを表現すべきだろう。
高音部譜表(ト音記号)の音域内でまとめられており、低音域の音はないため、軽やかであり、そして拍子感やリズム感などが感じにくく、どちらかというと横の流れが優先される構造となっている。まさしく「うた」を表現されたものである。
2、4、6、8小節、左手3拍目にやってくるd音は一つの区切りとなっていて、それはまるで舟唄における舟を漕ぐ動作にも連想される。