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レスピーギ :ミクソリディア旋法のピアノ協奏曲 P 145

Respighi, Ottorino:Concerto in mode misolidico P 145

作品概要

楽曲ID:6815
作曲年:1925年 
楽器編成:ピアノ協奏曲(管弦楽とピアノ) 
ジャンル:協奏曲
総演奏時間:41分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

執筆者 : 小林 由希絵 (1599文字)

更新日:2018年3月12日
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レスピーギの2曲あるピアノ協奏曲のうちの1曲。1925年作曲。 この曲が作られたのはレスピーギがローマのサンタ・チェチーリア音楽院で教授を務めていた時期で、〈ローマの松〉(1924年)や〈ローマの噴水〉(1928年)、〈教会のステンドグラス〉(1926年)、〈ボッティチェリの三部作〉(1926年)など大作を次々に世に送り出し、精力的に作曲活動をしていた頃である。年齢的にも46歳と創作活動に一番脂の乗りきった時期であり、この曲はレスピーギの絶頂期の作品と言えよう。  ボローニャ音楽院在学中に古楽研究の大家ルイジ・トルキに出逢って以来、古楽に興味を持ったレスピーギだが、19世紀末から20世紀初めに起こった新古典主義の流れの中で、レスピーギ以外にもカゼッラやピツェッティ、マリピエロなどイタリアの作曲家の他、フランス6人組やストラヴィンスキーなど、古楽に関心を抱き始めた作曲家は多くいた。しかし、レスピーギの古楽のスタンスは、この中の誰とも異なるものであった。レスピーギは歴史の中に埋もれてしまった古楽曲を発掘し、編曲して紹介するだけではなく、中世・ルネッサンスの音楽形式や作曲技法を吸収し、ロマン派や印象派の枠組みの中に融合させることで、自身の新しい音楽スタイルを確立していったのである。その一つとして、レスピーギが〈ミクソリディア旋法によるピアノ協奏曲〉で試みたのが、これまでの調性音楽ではなく、教会旋法による新しい音楽の可能性の模索であった。  曲名にある「ミクソリディア旋法」というのは、中世の時代に使われていたの教会旋法のひとつ。「GAHCDEFG」で構成され、長音階のスケールから第7音にあたる導音の音を半音下げた形と言える。導音がないため調性和声に比べてやや緊張感に欠けるが、牧歌的で明るい雰囲気が特徴で、クラシックのみならず、ジャズやポップスにおいても使われることが多い。 ■1楽章 Moderato  協奏曲の幕開けは、レスピーギらしい華やかで優雅なピアノソロから始まる。このピアノパートは旋律、和声ともに美しい。これまでにない新しい音楽技法を盛り込んだのは、曲のタイトルにもなっている教会旋法だけでなく、楽曲構成にもおよんでいる。古典派以降の音楽にみられるような主題の展開はみられず、形式に縛られない形で主題が様々な様相で浮かんでは消えてゆくような構成となり、これまでのレスピーギとは違った音楽へ取り組む姿勢がみられる。 ■2楽章 Lento-Andante con moto  曲の冒頭は雄大なスケールのテーマから始まり、チェロで奏でられるメロディに寄り添うようにしてピアノが音楽を進めてゆく。1楽章と同じように、形式にとらわれない比較的自由なスタイルで書かれており、ピアノとオーケストラの関係性もこれまでの一般的なピアノ協奏曲のスタイルとは違い、ピアノの独奏にオーケストラの伴奏が控えめについているような印象をうける。これは、20世紀に入りクラシック音楽界全体が新しい音楽を求めて無調音楽など前衛的な音楽に進んでいく中で、従来の音楽スタイルから脱却し、新しい独自の音楽を構築しようとするレスピーギの挑戦が垣間みられる。 ■3楽章 Passacaglia-Allegro energico  2楽章とattaccaでつながり、ピアノのファンファーレで幕を開ける。これまで1、2楽章で抑え気味な表現に留まっていたオーケストラが3楽章に入ると一気に解き放たれ、ピアノと共に一気に躍動し始める。ピアノとオーケストラの協奏的パートも登場し、主題や展開も明確で親しみやすいものとなっている。フィナーレでは、華麗で技巧的なピアノのパッセージと共に、オーケストラも絢爛豪華に鳴り響き、壮大に幕を閉じる。ここには、円熟期を迎えたレスピーギのオーケストレーションの巧みな技が冴えわたっている。

執筆者: 小林 由希絵

楽章等 (3)

第1楽章

総演奏時間:19分00秒 

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第2楽章

総演奏時間:10分30秒 

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第3楽章

総演奏時間:11分30秒 

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