代表作《ピアノと管弦楽のための「越天楽」による主題と変奏》(1951)を、ピアノ・ソロ用にアレンジした作品。「主題」である雅楽「越天楽」(ただし、ポピュラーな“平調”ではなく“盤渉調”を採用しているため、よく耳にされる「越天楽」とはメロディーがやや異なる)が、6つのヴァリエーションに変奏される。
主題:太鼓類を除く雅楽楽器(竜笛、篳篥、笙、琵琶、箏)の音が、忠実に再現される。
変奏曲1:華麗で装飾的、ピアニスティックな変奏。
変奏曲2:低音部と中音部と高音部がそれぞれ異なる調性で現れる複調的変奏。
変奏曲3:12音技法を用いた現代的変奏。
変奏曲4:「無言歌」という副題を持つ静謐な変奏。
変奏曲5:当時流行していたジャズのリズムを用いたポピュラー的変奏。
変奏曲6:無窮動なトッカータによる華麗な変奏。
コーダ:変奏曲6のクライマックスの後、直ちに「主題」が再現され、厳かに終わる。
編曲作品のため、読譜面も技術面も非常に難しいが、原曲とはまた異なる響きを体験できる作品。編曲委嘱者の佐々木弥栄子氏や高橋アキ氏など日本人ピアニストにより、国内のみならずアメリカ、ヨーロッパ等国外でもよく演奏されている。
□□楽譜情報□□
■全音楽譜出版社
「松平頼則 盤渉調「音取」と盤渉調「越天楽」によるピアノのための主題と変奏」