作品概要
作曲年:1845年
初出版社:Lemoine
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:ノクターン
総演奏時間:4分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (2)
執筆者 : 金澤 攝
(74 文字)
更新日:2010年1月1日
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執筆者 : 金澤 攝 (74 文字)
1840年代半ばの作で、ラヴィーナの出世作。”Ines”、”Sylvia”、”La Nuit”等々、多種多様なタイトルで出版されていた当時の有名曲。
総説 : 上田 泰史
(821 文字)
更新日:2015年8月25日
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総説 : 上田 泰史 (821 文字)
初版 : Paris, Henry Lemoine, 1845
第2版 : 同上, 1868
献呈 : À Mlle Inès MARTINEAU
本作はラヴィーナが最初に出版したノクターンで、27歳の頃に発表した。一般家庭に普及しつつあったこの時期、ラヴィーナの創作姿勢は技巧の追究から次第に愛好家向けの洒脱なサロン用小品に傾倒していく。
本作はちょうどこの分岐点に位置するヒット作で、仏、英、独、伊を初めとする各国で出版され、いくつも版を重ねた。英、伊ではタイトルを「シルヴィア」、「ヴィオレット」、献呈を受けた女性「イネース」など女性の名前にして出版されるなど、家庭の子女をターゲットとして販売されたことが分かる。1845年の初版に続いて、68年に再版が出ていることから、この曲の長い人気が伺われる。
ところで、この曲の初版と第2版では幾つか異なる点がある。本曲集では第2版に基づいて校訂しているが、初版ではここにある4小節の前奏がない。他に第2版で加わったのは第40小節のrit.の指示、第48小節のフェルマータ、第85小節6拍目上声のB、第89小節6拍目上声のAsである。
曲はA-B-A’の3部形式で書かれている。楽想はノクターン(夜想曲)という割に明るく、どちらかといえば明るい陽射しを感じせる。中間部は打って変わって悲愴的な雰囲気が支配的になる。こうした聴き手を引き込むストーリーの演出にはラヴィーナの舞台的感覚がよく示されているので、演奏の際は、曲想のコントラストをはっきり際だたせることが重要だ。旋律のフレージングや指示された細かいニュアンスを大事にすること、装飾音に気をとられてフレーズのまとまりが損なわないようにゆったりと歌うことが大切だ。
※この解説は2015年に出版されたアンリ・ラヴィーナ『ラヴィーナ・ピアノ曲集』(カワイ出版, 上田泰史校訂)の解説に基づいています。