「私は調性を抹殺したいのだ」と、1873年、リストはヴァンサン・ダンディらに語っている。協和音、伝統的な調性、因習的な形式を否定するようなリストの作曲は、当時の人々にとっては非常に急進的なものであった。《調のないパガテル》は、音楽史上、“調がない”ことを宣言した初めての曲である。リスト晩年1885年の作品。
1956年に出版され、近年、高く評価され、とりあげられるようになった。もともと、《メフィストワルツ第4番》とともに手がけられたワルツ作品であることから、この曲も《メフィストワルツ第4番(無調の)》とされることもある。中心音が決まらず、その調性は捉えどころがない。
曲の冒頭では悪魔の音程として知られるH-Fのトリトヌス(三全音)がみられる。
また増4度と減7度の和音が多用され、曲は漠然とした雰囲気に満たされている。