ボルトキエヴィチ :10のピアノ練習曲 第10番 Op.15-10 ホ短調

Bortkiewicz, Sergei Eduardovich:10 Etudes Presto furioso e-moll Op.15-10

作品概要

楽曲ID:47971
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:練習曲
総演奏時間:2分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1453文字)

更新日:2022年12月8日
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冒頭の表記は Presto furioso ですので、速く、熱狂的に激しく という意味ですね。これは筆者の個人的な要望にはなってしまうのですが、なりふり構わず弾いて欲しい! という一言に尽きます。冷静に、綺麗に、ミス無く、落ちつきをもって、適度なテンポで、歌って、弾く曲では無いのです。取り乱して欲しいのです。そうすることで起こり得るミスタッチなどは気にしないで欲しいです。それほど激しい曲で、それを表現する必要があるからです。

筆者が作曲家本人であれば、presto molt agitato と冒頭に表記するかも知れません。聴いている人たちがリラックスして聴けるような音楽ではなく、圧迫感のある、気の休まる瞬間の無い、追い詰められる曲だとお考えください。ですので、気が休まる、美しい、綺麗な曲、と感じる演奏はもうその時点で失敗です。

音楽史史上、agitato と冒頭に表記がある曲は何曲位思い浮かばれますか?例えば、リスト超絶技巧練習曲の10番fmollショパンエチュードop10-9、等ですね。これらagitatoの曲には共通する点があり、1拍目の表拍が休符になっているという特徴があります。1拍目の表拍はまさに音が欲しい場所なのですが、それをあえて休符にすることで、休符を感じることで、agitatoの意味である、「興奮して、急ぎこんで」を表現できるのですね。このエチュードも同じです。右手、1拍目の表拍が休符になっている小節がかなり多いですね。

そしてアクセントの位置にも注目します。2拍目がアクセントであったり、1拍目の裏拍がアクセントであったりしますね。

このような、極度に激しい曲を演奏する際にヒントとしてですが、「1拍目の表拍を感じる」という奏法があります。例えば24小節目から31小節目までをご覧ください。右手のメロディーラインを追っていくと、EGFis EDC HEDIs DCH ADC HAFis HAisA GisGFis となりますね。問題は、このラインのつなぎ目になります。即ち、最初の、EGFis の Fis と、次の、EDCの、E を絶対に繋げてはいけません。必ず休符を取るようにします。ですので、ペダルとか指を置きっぱなしにして、各小節最後のメロディー音を次に繋いでしまうことで、滑らかなメロディーラインが再現されてしまい、それは我々の欲するところではありません。

24~31小節間には、各小節1拍目の表拍に、左手のバスが、アクセント付きで書かれてありますね。そして右手は休符です。このバスをハッキリ、そしてバス以外は一切音が残らないようにしてください。

40小節目からムードが変わります。ここに、cresc molt con rubbia と書かれてあります。最大のクレッシェンドで、怒りを込めて という訳になります。Durに変わったものの、雰囲気は更に激しくなる部分と言うことです。この部分(40~60小節間)accelerand をかけても構いません、むしろかけた方が良いかもしれません。落ち着きをなくして弾きます。特に、57~60小節間、気が狂ったように雑に演奏します。そのような表現が必要になるからです。

最後、99~100小節間、和音が2つありますが、1つ目の和音から2つ目の和音に結構行きにくいですよね?しかしこれも時間を取って着実に弾くのでは無く、一気に2つの和音を弾いてしまいます。最後に落ち着きを取り戻すのでは無く、最後の最後までfuriosoを守ります。

執筆者: 大井 和郎

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