作品概要
解説 (2)
演奏のヒント : 杉浦 菜々子
(1063 文字)
更新日:2025年4月2日
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演奏のヒント : 杉浦 菜々子 (1063 文字)
ウィンナーワルツの持つ優雅な流れを意識しながら、アウフタクトの推進力を生かし、自然に1拍目へと向かいましょう。アウフタクトは音楽の流れを作るエネルギーを持っています。1拍目では、左右の手で作る和音の響きをよく聴き、それぞれの違いを感じ取ることが大切です。1拍目の和音にはさまざまな種類があり、その部分だけ取り出して弾いていくことで、フレーズのまとまり方が自然と見えてきます。
例えば、1〜4小節目のフレーズでは、1拍目の和音が徐々に下行するため、閉じていく方向性を作ります。響きをコントロールしながら、フレーズ全体が自然に収束するようにしましょう。続く5〜8小節目では、6小節目の和音でバスが下がり、響きの深さが増します。ここでは低音の支えを意識しながら、ドミナントートニックの役割を感じ、響きの変化を丁寧に作ることが重要です。
9小節目からは、アウフタクトの歌い出しに続いて、スタッカートの軽やかな伴奏が加わります。pで始めることが大切で、音量を抑えながらもこれからfへ向かっていく期待感を感じ、フレーズの源流であることを意識します。クレッシェンドの行き着く先の「ソラシレ」はエネルギッシュに、一層の推進力を感じながら弾きましょう。右手の動きが速くなる分、13小節目の2拍目の左手はしっかりと時間をとり、重みを持たせることで、音楽に安定感を与えます。こうしたアゴーギグはこの曲では随時、必要になってくるかと思います。
8分音符のアウフタクトに松葉のクレッシェンドが書かれている部分と書かれていない部分の違いに注目してみてください。書かれている部分では、エネルギーの増加を意識して、よりダイナミックな表現を目指します。
27小節目の「poco allargando」では、少しブレーキをかけるようにテンポを調整し、次の4小節への準備を整えましょう。この部分で急激に遅くなりすぎないように、自然な流れを保つことがポイントです。
そして、33小節目からの「vivace」では、指先の軽やかさを活かしながら、華やかに駆け抜けるような演奏を心がけます。和音がフラット系の響きを持つため、音色の柔らかさを大切にし、軽やかさの中にも優雅な表情を持たせましょう。
最後の37小節目のアルペジオは、ハ長調のⅠの和音で、華やかさの中にも安心感と安定感のある響きを意識します。最後の和音は、おへその下の丹田に意識を持っていき、堂々と締めくくります。
ウィンナーワルツならではの優雅さと軽やかさを表現し、華やかで素敵な演奏を目指してください。
演奏のヒント : 大井 和郎
(1157 文字)
更新日:2018年3月12日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1157 文字)
1.ウィンナー・ワルツ
技術的には難しくなく、発表会などではよく弾かれる曲ですが、音楽的に大変難しく、また楽譜から作曲家の真意を読み取ることも重要になってきます。たった1ページの1分弱の曲ですが、華やかに、優雅に弾くためには自由な即興性が求められます。この曲を演奏するためには、アコーギクの1種であるルバートを使います。指導者の皆様は、生徒さんに指導される時、このアコーギクでも、ルバートでもどちらでもよいので、簡単な説明をつけてあげてください。
「ジェットコースターのように、上りは徐々にスピードが落ち、下りは徐々にスピードを増して、また上りでゆっくりになる」等の説明がわかりやすいかも知れません。大切なことは、テンポを前に進めて速くした場合、必ずその分を取り返すことです。ゆっくりのままとか、速いままではいけません。
この曲は4小節で1つのフレーズになっていますので、4小節単位でルバートをかけても構いませんし、または8小節間を1つのフレーズと見なしても良いと思います。いずれにせよ、あたかも小節線が無いくらいに、自由に優雅に演奏します。9小節目からも同じで、徐々にテンポを上げ、13小節目辺りから今度は徐々にテンポを緩めて下さい。
その他気をつけなければならない事を挙げていきます。8小節目2拍目裏拍から主題Bが始まりますが、8-12小節目と、それと同じ部分である24-28小節目を比較してみると、まず内声に変化が見られます。この内声は重要ですので、決して消えてしまうような事が無いように、しっかり耳で聴いて弾いてください。そして8-12小節目の反復が順次進行で上行しているのに対し、24-28小節目はいきなりV7/viに飛んでしまいます。これは驚きの心理状態ですので、十分に表現します。
この曲でよく間違った演奏をされるのが最後のCodaの部分です。33小節目を見てみると、vivaceと書いてあります。するとここからテンポを倍くらいに速くしてしまう奏者がいます。vivaceとはイタリア語で「生き生きと」という意味があり、英語では「lively」という意味になります。これは決して「テンポを速く」という指示ではありません。むしろ、37小節目は逆にゆっくり演奏されてしかるべきだと考えます。
また、33-34小節目と、37-38小節目に付けられているcrescendoも議論を呼ぶところです。フォルテ記号にcrescendoをかけるととんでもない音量になってしまいますね。ここはむしろdiminuendoしたいところですが、作曲家の意図としては、このレゾネンス(余韻)的なアルペジオを華やかに聴かせたかったのではと想像しています。個人的に筆者がこれを演奏するのであれば、crescendoは殆どかけないかもしれません。
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