カバレフスキー : 30の子供の小品 小さい歌 Op.27-2
Kabalevsky, Dimitri : 30 Children's Pieces A little song Op.27-2
作品概要
解説 (3)
演奏のヒント : 杉浦 菜々子
(632 文字)
更新日:2024年3月11日
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演奏のヒント : 杉浦 菜々子 (632 文字)
1~2小節、3~4小節の左手のフレーズは波の満ち引きのように、2つめの音に引き寄せられては、元の音に戻っていきます。元に戻ったという感覚を持って聴いてみてください。2小節目と4小節目ではdの音がdisに変化したことによって、引き起こされる心境の変化があると思います。4小節目の響きは、不穏さや不安感でしょうか。その後に待ち受ける5小節目からのmfは、大きさが強くなるというよりも広がりと響きを感じて演奏すると良いと思います。9小節から12小節の左手は、半音階で下行し続けます。それに伴い、右手は上行し、両手で広げていくようにクレッシェンドすると、12小節目のクライマクスに向かっていけると思います。残る13小節目から最後にかけて左手は再び半音階の下行形ですが、今度は終始pで、静かな緊張感を持って歌いましょう。
この「小さい歌」は、美しく歌わせたい曲ではありますが、孤独感や自分にはどうすることもできないことを抱えた想いなどを秘めた心を反映させた歌であると思います。それはカバレフスキーの生きた時代や人生を顧みることで想像できます。そのような曲の深みに共感し、代弁者となって歌うことが要求されるでしょう。冒頭に代表されるメロディの上行形のモチーフは、暗闇から光の差すところに手を伸ばすようにも感じます。全体には、静けさの中に、強い気持ちが隠されていることを念頭に置きながら、美しいメロディとハーモニーをあまりに解放的になることなく内省的に表現するのがよいと思います。
演奏のヒント : 大井 和郎
(404 文字)
更新日:2024年5月14日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (404 文字)
まず注意すべきはアーティキュレーションです。フレーズにはスラーが書かれていますが、フレーズの最後の音を短く切るようなことが無いようにします。短くスタッカートのように切ってしまうことは、曲を躍動的、楽観的にしてしまうからです。この曲は悲しみの部分も含まれています。
フレーズの最後の音は、手を上に上げるジェスチャーのモーションと捉えても構いません。つまりは、1つのフレーズから次のフレーズへは、ペダルで繋いでしまうこともありとお考え下さい。
テーマ(主題)は、4つの種類があると考えます。1~2小節間、3~4小節間、9~10小節間、11~12小節間の右手4つです。メロディーは勿論、その下にある和音の性格等も鑑み、4つのフレーズの性格、ムード等を想像し、4つのフレーズの違いを付けて下さい。明らかに、11~12小節間は最も感情が高まる部分です。9~12小節間は、聴いている人達を圧迫するような演奏をしてみて下さい。
解説文 : 熊本 陵平
(923 文字)
更新日:2024年11月14日
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解説文 : 熊本 陵平 (923 文字)
一部形式
A[a(1から4小節)+b(5から8小節)]
A1[a1(9から12小節)+コーダ(13から16小節)]
冒頭、主題の提示においては、ホ短調と捉えるとD♯が無く、導音が機能していない。このことから冒頭2小節はEを終止音とするエオリア調であり、その後の2小説では導音が機能してホ短調であることが分かる。このように冒頭に部分的に教会旋法が使われるのは、実はバロック時代にもその例を見ることができる。例えば、バッハのいくつかのインヴェンション、例えば、1番や3番は冒頭で部分的にミクソリディア調が使われていて、その旋法の終止音と同じ音を主音とする調へ移行していくのだ。
主題の性格としては、音域こそ高音域に寄っているため(大譜表ではなく二つの高音部譜表である)重々しさは感じられないが、順次進行で上行して、その後2と4小節いずれも導音が機能しないまま下行していくことと短調の暗さを合わせて考えるとそれほど軽やかでもなく、いわば精神の陰鬱とした暗さが感じられる。
1から4小節で主題の提示が行われると、5から6小節はゼクエンツによって下行する。こうした主題提示後にゼクエンツを置くのもバッハの構成と似ている。7から8小節は5から6小節の変奏である。
9小節から後半A1楽節へと入る。ここでは左手伴奏部において半音階下行進行となっている。10小節目は実質Ⅵ調上Ⅴ7、第5音下方変位、第二転回=増六和音が形成されているが、D♭ではなくあえてC♯として書かれている。和声表記としてはD♭でないとおかしい。考え方としては、類似する12、14小節いずれも導音が配置されている(12小節はイ短調のV6和音の導音G♯、14小節はホ短調のドッペルドミナントの導音F♯)ことから、10小節のC♯も導音的なニュアンスを持たせたかったのだろう。導音は上行限定進行音である。全体の流れとしては半音階下行進行でありながら、その流れに抗うようにして存在する音がこのC♯と考えると、作曲者の祖国の政治的状況も想起されるのである。
コーダの終止は、ナポリ終止である。これはナポリ和音からそのまま主和音Ⅰで解決されるサブドミナント進行の一種なので、やや柔らかい緊張感での解決となる。
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