第一次世界大戦から、母国スペインで6年間すごしていたモンポウは、1914年から1917年にかけてこの《ペセブレ》を作曲した。ペセブレとはスペイン語で、キリストが誕生した馬小屋の「かいば桶」、キリストの降誕の「クリスマス飾り」などを意味する。以下の3つの小曲からなり、いずれもシンプルな書法でかかれている。標準演奏時間は約7分。
1.踊り / No.1 "Dansa":ト短調、8分の6拍子、「静かに」。カタルーニャの舞曲。一定のリズムで奏される伴奏の上で歌われる旋律が優しい。調が変化するのでそれぞれの調の性格を意識して奏する。
2.隠者の庵 / No.2 "L'ermita":イ音からのエオリア旋法、4分の3拍子。レント-モデラート。「エルミタ」とは、「隠者の庵」という意味で、カタルーニャ地方に多くある小さな庵を指している。薄暗い中、深々と雪がふりつもっていくように繰り返される8分音符の中で、旋律が立体的に浮かび上がるように弾かれなければならない。
3.羊飼 / No.3 "El pastor":旋法風、4分の3拍子、モデラート。「無頓着な」と記された単旋律は、三和音の伴奏を伴って、徐々に律動感を増していく。単調な繰り返しの中で、高音域での金属音が印象的な響きを残す。