作品概要
解説 (1)
演奏のヒント : 大井 和郎
(1951 文字)
更新日:2018年3月13日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1951 文字)
一昔前、一体誰が、「バッハの曲を演奏するときはペダルを使ってはいけない」と決めたのかはわかりませんが、そのようなナンセンスな時代は終わりました。バッハの演奏にルールはありません。誰かが決めるものでもありませんしルールを決定する権利も誰にもありません。国によっても演奏法は様々で、フランスなどはかなり自由に演奏され、ソフトペダルも使う位です。バッハの曲は本人のインスピレーションによって演奏してしかるべきだと思います。バッハの楽譜には基本的にtempoマーキングも、曲想の指示も、強弱も、アーティキュレーションも、フレーズも、書いてありません。しかもハープシコードやオルガンで演奏された曲を現代のピアノで演奏するわけですから、無理にハープシコードやオルガンの真似をする必要は無く(真似をするくらいであれば本物の楽器をステージに持ってくれば良いだけのことです)、現代のピアノの特性を活かして演奏してこそピアノで演奏する意味が出てきます。
しかしながら、守らなければならないことは各声部の独立であります。バッハが書いた曲はポリフォニーの要素がとても強く、それは演奏上、正確に再現されなければなりません。この声部の独立をいい加減にしてしまうことはそもそもバッハの書法を無意味にしてしまう結果となるからです。これだけは気をつけます。
そのような意味で、このアルマンドもペダル無しでは演奏は不可能です。ペダルによって声部を繋いでいかなければならないからです。そしてペダルを入れる事によって生ずる16分音符の濁りも避けることが出来ません。声部を繋げ、且つ細かい音符の濁りを避けるにはどうしたらよいでしょうか?少しずつ解説していきましょう。
例えば1小節目の1拍目、和音はGBDでこれ以外の音はソプラノに書いてある16分音符のCです。このCは拍の最も最後に書いてありますので、1拍目を全て1つのペダルを使って踏み続けても、2拍目でペダルを変えるか無くすかすれば、このCは気になるレベルではありません。故にこの拍を1つのペダルで拍一杯分踏み続けるとします。そうすると、バスのGは2拍目のAに切れ目無く繋げることができます。
しかし同時に、1拍目の16分音符も全て音価以上に伸ばしてしまうことになります。
もう一つの方法としては、バスのGが2拍目のAに変わる寸前にペダルを一瞬だけ入れる方法です。このペダリングであれば、16分音符を必要以上に伸ばす必要はなくなります。
これら2つの方法のどちらを取ろうと構いません。筆者の考えは、1拍目バスのGと2拍目バスのAが恐らく両方とも5の指であると予想されますので(恐らく演奏上はその方が楽だと思います)、5から5に弾き直すと、その瞬間に切れ目が生じます。これを何としてでも避けたいところです。ですから上の2つの方法のどちらかを用いてバスを繋げます。
筆者は通常後者の方法を取ります。つまりはバスが変わる直前に一瞬だけペダルを入れバスを繋ぎ、中にある16分音符を不必要に伸ばさない方法を取ります。
ここから先は大変主観的にな話になりますが、しかしながら、このアルマンドは暖かみがあり、スムーズに横に流れるべき曲だと筆者は解釈しています。非和声音がペダルによって伸ばされ、結果的に濁りが生じるような場所に書かれてない限りは、ペダルはこの場合踏み続けても良いと考えています。皆さんはどう思われますか?
さて1小節目2拍目を見てみましょう。右手にトリルがあり、16分音符は音階を辿って下行しています。このような状況の時(音階によって非和声音が書かれてある場合)、ペダルを1拍分踏み続けると今度は本当に濁りが生じます。ですので、ここはペダルを避けます。ここから3拍目のバス、Hに移る直前に一瞬だけペダルを踏み、バスを切れ目なく繋ぐようにします。
以降、バスやその他の声部が指の事情によって切れてしまう部分は必ずペダルを用いるようにします。ペダルが全く要らない部分は、8小節目3拍目より、11小節目3拍目までです。ここはペダルは要りません。11小節目3拍目、右手に切れ目が出来ますので再びペダルを用います。
後半、例えば14小節目の最後の右手の音である16分音符のCから、15小節目1拍目の最初の右手の音符である16分音符のCまでを繋がなければなりませんので、ここで一瞬ペダルを用います。
以降、同小節2拍目最後の右手Aから3拍目のAに、同小節4拍目最後の右手Fから16小節目のFまで、それぞれ同じ処理をします。
全体的な曲想としては、決して硬くならず、拍を感じさせることなく、優雅に横に流れるような演奏が望ましいです。決して16分音符を大きくせず、オーバーラップ奏法やペダルを使ってスムーズに横に流すようにします。
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