ブルグミュラー :18の性格的な練習曲 ゴンドラ漕ぎの歌 Op.109-14

Burgmüller, Johann Friedrich Franz:18 Etudes de genre (faisant Suite aux Etudes faciles op. 100) Refrain du Gondolier Op.109-14

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:練習曲
総演奏時間:1分50秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:応用3 応用4 応用5 応用6 応用7

楽譜情報:11件
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解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (2483文字)

更新日:2020年11月30日
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全体の流れ:

注目するべきは、Andantino con moto という標示記号です。あまりゆっくりすぎず、動きを付けてと解釈して良いと思います。楽譜を見る限り(東音企画版やネット版)、ritardando はどこにも書かれておらず、各終止形(カデンツの部分)に、rall ラレンタンドが書かれています。

rallは、故意に徐々に遅くという意味で、要するに曲全体に、con moto を意味する動きがあって然るべきと考えます。別の言葉で言うと、典型的な複合拍子の、淡々とした進み方ではなく、強調すべき部分はそれなりに時間を取ると理解します。

全体の構成:

全体的な曲の考え方として、歌と伴奏と考えます。歌の部分がメロディーで、伴奏の部分は左手のアルペジオと考えます。ですから、途中で左手のアルペジオがアルペジオではなくなる部分では、それなりの表現、例えばそれは2重唱の部分であったり、感情的、感傷的な別の旋律と考えます。

注意点その1:

この曲で注意すべき点はまずペダルの問題があります。濁りを避けるのですが、ある程度のテンポで弾いた場合、濁りが気にならなくなったり、逆に細かく踏み替えすぎてバスを失う事も避けなければならないかも知れなく、その辺のさじ加減や判断は最終的には指導者が決定することでありますが、一応の助言を書いておきますのでご参考まで。例えば、1ー3小節間、ペダルは1小節に付き1回、1小節間を踏み続けて良いと思います。2小節目にはメロディーにA Hがあり、若干の濁りが生じますが、小節の最後の部分ですので、気にならないと思います(濁りとは、長く延ばせば延ばすほど気になるものです)。

この曲のペダリングで注意しなければならないのは、「装飾音をペダルに含ませないようにする」事です。3小節目、5小節目、13小節目、15小節目、等、ペダルの中に入れて延ばしてしまわないように気をつけて下さい。ですから例えば、13小節目のような場所のペダリングが問題になります。仮に装飾をペダルに含ませることを避けようとした場合、どうしても2拍目でペダルを変えなければなりません。しかしそうすることで、バスのDを失います。

そこで、オプションとして2つの方法があります。1つは、2拍目でペダルを変え、濁りを避けて、バスを失う事。もう1つは、1拍目の左手は全ての音を指で伸ばし続け2拍目の右手メロディーDまで延ばし続けることで、2拍目でペダルを変えてもバスを失わずに済みますね。しかしながら、左手の2拍目のFisを、バスのDを5の指で伸ばし続けながら弾くことは殆どの人には無理だと思います。

よって、2拍目の左手の最初の音であるFisを右手で、メロディー音のDと一緒に弾きます。そうすることで、左手は、1拍目の全ての音を指で伸ばし続けることができますね。そして伸ばし続けながら、2拍目でペダルを変えます。そうすることで、バスを失わず、しかも装飾音の濁りも避ける事が出来ます。しかしながらこれはあくまで主観的判断に基づいて良いと思いますので、最終的には指導者に、どのおようなペダルを用いるかをお任せします。このように、フィンガーペダルを使うことで、バスを失わずに、濁りを避けられる部分が数カ所あります。15小節目もそうですね。

濁りとは、実に微妙で曖昧な問題で、徹底的に避ければ良いというわけでもなく、適度な濁りによって暖かみが出る場合もあります。誤解しないで欲しいのですが、ペダルにより、2つの異なった和音をミックスして濁らせてしまう事は絶対に良しとはしません。しかし同じ和音内に存在する非和声音は、その状況に応じて濁っても、むしろ良い場合もあります。

前述しましたように、濁りは時間が経てば立つほど耳障りになります。例えば、37小節目、1拍目はペダルを踏み続けてもそこまで問題はないと思います(Dis と E)。ところが、2拍目からrallがかかっていますので遅くしますね。この時は流石に気になるものです。この2拍目のDis とEの濁りは避けます。

注意点その2:

ダイナミックを平坦にしないこと。楽譜全体を見るとフォルテやフォルテッシモは書いていません。でもだからといってmpのままとか、pのまま、強弱が平坦ではいけません。これも状況状況に応じて変化させなければなりません。

この曲の形式は:

A 1ー10(11)、

B 12ー27

C 27ー35

Coda 35ー38

になりますが、各セクションには、ほぼ同じ2つのフレーズが入っています。全く同じ場合もありますが、1回目と2回目は何らかの変化がなければなりません。ダイナミックのみならず、ルバート等も考えますが、これらの2つのフレーズを全く同じに弾いてしまうことで、ダイナミックが平坦に聞こえるようになります。たとえ同じ強弱記号であっても、1回目と2回目は多少の変化があって良いと思います。

ダイナミックを平坦に聞こえさせないためには、「ラインのシェープ」、「方向性を持つ事」が重要になります。

注意点その3:

作曲家の心理状態を考える。この曲の和音の響きを敏感に感じ取り、どのような気持ちであるかを考えます。例えば、最初のAセクションで8ー9小節間はピークポイントに達するところでもありますが、8小節目の最後の和音である、Dis Fis A C と、次の9小節目の最初の和音である、Fis A Cis E の2つの和音は、気持ち的にどのような違いがあるでしょうか?スフォルツアンドは9小節目に書かれていますが、本当にこちらの和音の方が大きいと感じますか?9小節目の最初の和音は、ある種の喜びや、安堵、ときめき、優しさ、を感じて下さい。8小節目の最初の和音は、それに比べて、悩ましい、愛くるしい、心配、など、テンションの高い和音ですね。これら2つの和音を弾くときでも、奏者自身ががそれを感じて、表情を変えるようにします。

今述べたことはほんの一例に過ぎませんが、この曲にはそのような心理的描写が多くあります。

それらを敏感に感じることが重要なポイントになります。

執筆者: 大井 和郎

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