第1楽章 ハ短調 4分の4拍子 ソナタ形式
(序奏)
突然の減7度跳躍下降で始まるMaestosoの序奏は、鋭い付点リズム(複付点8分音符+32分音符)と2度順次下降の動機によって成り立っている。また、主部へ突入する少し前、第12小節のアウフタクトからあらわれる順次上行音型は、音価を16分3漣音符に短くして主要主題の要素へと変貌する。
(提示部)
ト音と変イ音のトリル音型が主要主題を導き、主部(第19小節~)へ突入する。主要主題は16分3連音符による急速な4度順次上行と減4度跳躍下降の組み合わせ、および減7度跳躍から順次下降の組み合わせといった具合に、跳躍と順次進行、上行と下降という対照をなす動機の組み合わせで構成される。
主題の確保(第29小節~)を経て推移(第35小節~)に至る。ここでは主要主題の動機が発展した、絶え間なく動き回る16分音符の音型と8分音符を主体とした音型が転回可能対位法によって模続進行し、変イ長調に到達する。
変イ長調による副次主題(第50小節~)は、序奏における付点リズムの連打と2度順次に由来している。束の間の副次主題は、すぐさま減7和音の分散和音によって引き裂かれ、主要主題の動機による推移(第56小節~)とコーダ(第67~69小節)で提示部を終える。
(展開部+再現部)
展開部(第70小節~)ではもっぱら主要主題の動機が扱われる。主要主題の音程が拡大された動機と、同じく音価が拡大されてトリルを伴った動機が、転回可能対位法によるフガートに展開される。ト短調からハ短調、ヘ短調へと転調し、主要主題の跳躍音型が和音化されて模続的に繰り返されるうちに主要主題の主調再現(第92小節~)へなだれ込む。
副次主題が同主長調であるハ長調で再現(第116小節~)された後、ヘ短調で確保のような発展部分(第124小節~)を挟み、減7和音の分散和音と主要主題の動機による推移(だ132小節~)を経て、コーダ(第145小節~)へ至る。
コーダでは、序奏の中にあらわれ、主要主題の動機へ変容した順次上行音型が和声づけされてコラール風に響き、ポリフォニックな技法を駆使した楽章にふさわしく、同主長調の主和音へピカルディ終止する。