モーツァルト :ピアノ・ソナタ 第2番 第3楽章 K.280 K.189e

Mozart, Wolfgang Amadeus:Sonate für Klavier Nr.2  Mov.3 Presto

作品概要

楽曲ID:30494
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:5分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:応用7 発展1 発展2 発展3 発展4

楽譜情報:9件
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解説 (1)

解説文 : 熊本 陵平 (1089文字)

更新日:2025年1月17日
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ソナタ形式

  提示部[第一主題提示(1から16小節)→推移部(17から37小節)→第二主題提示(38から57小節)→終結部(58から71小節)→コーダ(72から77小節)]

  展開部[第二主題展開(78から97小節)→移行部(98から106小節)]

  再現部[第一主題再現(107から123小節)→推移部(124から148小節)→第二主題(149から168小節)→終結部(169から182小節)→コーダ(183から190小節)]

 主調はヘ長調。第一主題、第二主題ともに2つ異なる性質を持つ二部構造となっている。

第一主題では前半部はスタッカートや8分休符など、跳躍進行でリズミカルな動きを示すのに対して、後半部では半音階進行、順次進行などによって、より密集された滑らかな音形となっている。第二主題でもこうした二部構造は見られ、前半部では単声による旋律線に対して、後半部ではリズミカルな伴奏音形が低音部で現れ性質の違いを表現している。

こうした主題の特徴から、その主題を軸とした展開は変化に富み、移ろいやすいイメージがある。しかしその一方で、モティーフの共有と展開は統一感があり堅牢な構造を持つ。例えば、第一主題から第二主題への推移部では、それぞれの主題と同様に二部構造になっており、前半部低音で起こるモティーフが後半部では主となるように変化している。

第二主題、前半部の和声判別に悩むところだが、この場合は展開部において同形のフレーズが属九和音であるため、ドミナント属九和音と判別する。勿論サブドミナントIVでも可能性はあるが、前後で同形のフレーズが展開された場合、そのフレーズに大きな変化が見られなければ基本的にはその和声進行は共通しているとする。

興味深いことに、再現部の推移部後半(143~149小節)では、下声部はドッペルドミナント→ドミナントの和声進行を示唆しているのに対して、上声部ではⅠ第二展開→ドミナントというふうに、上下で違う和声進行が見られる。こうしたことは、モーツァルト独自にポリフォニーを解釈した結果での表現だろうと思われる。

展開部は第二主題の変形されたものが展開されるが、g moll から F dur へ模倣された後、部分的モティーフをゼクエンツによって展開し、その後は経過楽節を経て半終止となる。提示部においては、第一、第二主題が丁寧に展開されたのに対し、展開部においてはこのようにかなりコンパクトにまとまっている。

このため、展開部の割合が少ないソナタ形式である。

再現部は細かい差異はあるものの、主調で展開されることを除いては提示部と同構成だと考えられる。

執筆者: 熊本 陵平

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演奏:米川 幸余