ソナタ形式
構成は以下の通り。
提示部[第一主題提示(1から12小節)→推移部(13から26小節)→第二主題提示(27から34小節)→推移部(35から42小節)→終結部(43から53小節)→コーダ(54から56小節)]
展開部[提示部推移モティーフ展開楽節(57から66小節)→第二主題展開楽節(67から77小節)→移行楽節(78から82小節)]
再現部[第一主題再現(83から94小節)→推移部(95から108小節)→第二主題(109から122小節)→推移部(123から130小節)→終結部(131から141小節)→コーダ(142から144小節)]
主調はヘ長調。第一主題は三つのモティーフによって構成されている。まず一つ目は1から2小節に見られる、四分音符三つと付点四分音符で主和音Ⅰの響きを表現しているもの。この三つの四分音符によるモティーフはやがて第二主題にも共有される。続いて3から6小節に見られる、左手伴奏部が八分音符の重音と和音、上声部では下行順次進行を中心とした滑らかな旋律線。そして最後に7から12小節にて突然上へ跳躍して16分音符で活発な表情を見せるモティーフ。この最後のモティーフは3小節単位で反復される。
第一主題全体の動きを見ると、四分音符→八分音符→16分音符というふうに次第に短い音価の音符が主体となっていく。それとともに音楽もより細やかで活発な表情が見られる。
推移部では右手上声部においては八分音符三連符による分散和音線による展開がなされている。一方で左手ではオクターブで和音構成音の根音が奏される。根音でのオクターブは和声的に安定感をもたらすもので、幾分放漫な動きとなった上声での八分音符三連符の分散和音線を引き締めまとめ上げる効果を持っている。18小節から半音階的に下行していくゼクエンツとないて、属調ハ長調から部分転調して、ハ長調→変ロ長調→イ長調→ト長調と移行して主調ヘ長調に戻って、26小節で半終止を迎える。
第二主題は属調ハ長調に転調する。前述した通り、第一主題冒頭のモティーフである四分音符3つが、ここではバス音域でオクターブによって力強い分散和音線を形成している。その力強い出だしと対照的に、16分音符の反復的音形が軽やかに現れる。この16分音符の音形は第一主題における7小節目からの16分音符モティーフから派生展開されたものだと捉えることもできる。
35小節から推移部に入る。ここは第一主題後の推移部と同様に八分音符の三連符が使われているが、ニュアンスはより豊かで、スタッカートによる下行形とスラーによる上行形の2つの動きが1セットとなったゼクエンツとして進行している。
43小節から終結部となる。終結主題におけるⅠ→属7第2転回→Ⅰ第1転回の和声進行によって上行することは、バロック時代におけるフィグールのアナバシスのようなもので高揚感を与えてくれる。
提示部と再現部に比べると、展開部はいささか短い。二つに構成されており、前半部は提示部の推移部における八分音符三連符のモティーフを展開したもの。後半部では第二主題モティーフをゼクエンツによって展開したものである。このような動きからやがて主調の平行調であるニ短調へ収束されていき、82小節から主調ヘ長調の半終止となる。
83小節から再現部に入る。
95小節から推移部となる。101小節から提示部同様にゼクエンツによって下行していくが、内声に8分音符三連符が流れる中で、2声の掛け合いとして上声で導音→主音を単音で、下声で属和音の第7音→主和音Ⅰ第3音をオクターブで演奏される。
109小節から第二主題が再現される。提示部では第二主題提示後にすぐ推移部に進行していたが、再現部では第二主題が再現された後、ゼクエンツによって主題モティーフが展開されて推移部に至る。
提示部と同様、推移部から全体的に上行進行となり高揚感のある終結を迎える。