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トゥリーナ :ピアノ三重奏曲 第1番 Op.35 ニ短調、ニ長調

Turina, Joaquin:Trío para violín,violoncelo y piano No.1 d-moll、D-Dur Op.35

作品概要

作曲年:1926年 
楽器編成:室内楽 
ジャンル:室内楽
総演奏時間:22分30秒

解説 (1)

総説 : 小林 由希絵 (2427文字)

更新日:2018年6月18日
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 アルベニス、ファリャと並び、20世紀前半のスペインを代表する作曲家ホアキン・トゥリーナが1926年に作曲した最初のピアノ三重奏曲。

 1882年、スペインのアンダルシア地方セビーリャに生まれたトゥリーナは、幼少期の早い頃から音楽的才能を開花させ、故郷セビーリャとマドリードで音楽を学んだ後、1905年から第一次世界大戦が勃発する直前の1914年までの約10年間、パリへ留学し、作曲とピアノの研鑽を積んだ。

パリ留学中のトゥリーナは、フランス近代音楽を代表する作曲家セザール・フランクの弟子で、スコラ・カントゥルムを設立したヴァンサン・ダンディの元で作曲を学ぶ一方で、ドビュッシー、ラヴェル、ポール・ドゥカス、フロラン・シュミットなど、当時のパリの第一線で活躍していた超一流の作曲家たちと交流することで、それぞれ異なる彼らの音楽スタイルを吸収し、最先端の作曲技法を身につけていった。

 トゥリーナは、1926年に発表したこの曲で「国民音楽賞」を受賞。〈ピアノ三重奏曲 第1番〉Op.35は、トゥリーナの名前を一躍スペインの国民的作曲家へと押し上げた記念すべき出世作と言える。

 「国民音楽賞」を受賞したこの年のトゥリーナの活躍は目覚ましいものがあり、組曲〈セビリア〉の第2曲〈真夜中の聖木曜日〉が世界的に名高いスペイン人チェリストのパブロ・カザルスによって演奏されたり、〈セビーリャに捧げる歌〉の初演がトゥリーナの故郷セビーリャ市から祝賀を受けるなどしている。

これらのことからもわかるように、この曲はトゥリーナが40代半ばに差し掛かり、作曲家として脂の乗っている時期に書かれた作品であることが裏付けられる。

 では、引き続いて曲の詳細について見ていこう。

 この曲は、20世紀前半のクラシック音楽界を席巻していた新古典主義の影響下で書かれており、第1楽章が「前奏曲とフーガ」、第2楽章が「主題と変奏曲」、第3楽章が「ソナタ」となっている。

◯第1楽章…「前奏曲とフーガ」、4分の3拍子、Lento。

 曲の冒頭から、ヴァイオリンとチェロの緊張感のある響きが鳴り響く。続いて9小節目からは拍子が4分の3拍子から4分の2拍子へと変わる。ここからは、楽器もヴァイオリンとチェロの弦楽器からピアノソロへと移り変わり、フランス近代の印象派の音楽を彷彿とさせる穏やかな表情へと変わっていく。

 プレリュードを経て、フーガに入ると、テンポもLentoからAndanteへと上がり、音楽も盛り上がりを見せる。

「フーガ」と銘打っているものの、バロック様式的な厳格な作曲技法に基づいたフーガではなく、フーガ的技法で書かれたトリオという印象が強く、比較的自由な技法で書かれている。

 第1楽章を聴くだけでも、トゥリーナの音楽スタイルが、彼と同時代の20世紀前半を生きた同じスペイン人作曲家のアルベニスやグラナドス、ファリャなどのスペイン的な色彩感を全面に押し出した国民楽派的な作風とは一線を画した音楽スタイルだということがお分かりいただけるだろう。

◯第2楽章…「主題と変奏曲」、4分の2拍子、Andante。

 主題と、5つの変奏曲からなる楽章。

 主題部は、4小節間のピアノの前奏の後、テーマがチェロで奏でられはじめ、続く17小節目からはメロディがヴァイオリンへとバトンタッチされていく。ほの暗いメロディに光が時折射してくるようなコントラストが独特な風合いを醸し出している。

 第1変奏は、Allegro Moderato、8分の6拍子で、ピアノが音楽をリードしていく。テンポも上がり、トゥリーナが元々持っているスペインらしい気質も顔をのぞかせている。

 第2変奏はAndante mosso、4分の2拍子で、とぼけたようなユーモアのある風情。

 第3変奏はModeratoで、拍子は8分の5拍子と変拍子となっている。終止ピアノソロとなっており、ピアニストの腕の見せどころである。

 第4変奏は、主にヴァイオリンとチェロの弦楽器2パートによって奏でられる4分の3拍子の速いAllegroの部分と、主にピアノソロによって奏でられる4分の2拍子の落ち着いたAndanteの部分とが代わる代わる登場し、その後Allegroで3つの楽器が合流すると、第5変奏へと繋がっていく。

 第5変奏はAndantinoで、拍子は第1変奏と同じく、8分の6拍子へと戻り、再びトゥリーナらしいスペインらしさが顔をのぞかせるようになってくる。フェルマータを経て、Andanteで主題が再現され、静かに幕を閉じる。

◯第3楽章…「ソナタ」、Allegro、8分の6拍子。

 〈ピアノ三重奏曲 第1番〉Op.35のラストを飾るのは、力強い第1主題と、伸びやかな第2主題とのコントラストが美しいソナタ。

やや気難しい音楽であった第1楽章・第2楽章とは違い、明るくおだやかで、故郷スペインのセビーリャのまぶしい太陽のような明るい音楽性と、約10年におよぶパリでの留学生活で培った高度な作曲技法とフランス印象派の洒脱な音楽性とが、トゥリーナの音楽的手腕によって見事に融合されている。この作品が「国民音楽賞」を受賞したのも納得の出来映えである。

第3楽章の締めくくりには、第1楽章の主題も顔を表し、華やかに終わる。

 トゥリーナの音楽作品は、フランコ独裁政権下においての彼の非政治的な姿勢が、フランコ体制と妥協したと見なされてしまったため、彼の没後の一時期はタブー視されてしまい、残念ながら演奏機会に恵まれなかった。

しかし、世界的に有名なユダヤ系ヴァイオリンニストのヤッシャ・ハイフェッツと、彼と共に「百万ドル・トリオ」の一員として世界的に活躍したチェリストのグレゴール・ピアティゴルスキーが演奏レパートリーとして取り上げて以降、再び注目を集めるようになった。彼らの功績もあり、近年ではトゥリーナの音楽作品の演奏機会も増え、国際的に広く再評価されている。

執筆者: 小林 由希絵

楽章等 (3)

第1楽章

総演奏時間:7分00秒 

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第2楽章

総演奏時間:8分30秒 

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第3楽章

総演奏時間:7分00秒 

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