1896年に作曲された。19曲のノルウェーの民謡の編曲から構成された曲集である。ステーヴ(ノルウェーの民俗詩の1種で、特定の韻律パターンを持つ)や子守歌、牛を呼ぶ歌、民族バラード等の素朴なメロディーが顔を並べている。
第1曲目は<牛を呼ぶ声>。バスの保続音や内声のオスティナートが特徴的である。メロディーには、時折、牧歌的な装飾が施されている。
第2曲目は<それはとんでもない愚かさ>。原曲はヴァルドレスに由来する。そのテクストの大意は、「結ばれようのない人に恋をして愛を無駄にするとは、世界にまたとないとんでもない愚かさである。そんなに幾度も私を腕に抱くとは、どういうつもりであったのか?私を騙し、盲目にするつもりだったのでしょう。」というものである。アンダンテ・エスプレッシーヴォのこの曲は、4声体を基調としており、メロディーはアウフタクトで開始する。そして、所々に、増4度の響きが散りばめられている。
第3曲目は<王は東国を統治した>。ソグン地方の歌に由来する。そのテクストの大意は、「ある王が東国を統治していた。その名は勇者ホーコン。ホーコンのもと荷は見るからに恐ろしい戦士が数多くいた。しかし、誰もが美女と呼ぶ娘ラグンヒルもいた。」というものである。アンダンテのこの曲では、堂々とした性格を備えた順次進行が特徴的である。
第4曲目は<シリ谷の歌>。アッレグレット・コン・モートは8分の6拍子で、アウフタクトで開始し、8分音符と4分音符を交互に演奏するリズムが特徴的である。
第5曲目は<わが青春の日に>。アンダンテのこの曲は、やや規模の大きいバラードである。そして、4分音符のアルペジオで開始する。
第6曲目は<牛呼ぶ声と子守歌>。この曲では、テンポがアンダンテ→アレグロ→ピウ・レント→アンダンテ・モルトと変化する。そして、主として、多声的に書かれている。
第7曲目は<子守歌>。アッレグレット・コン・モートのアッラ・ブレーヴェで書かれている。そして、低音域の左右のユニゾンで開始する。
第8曲目は<牛を呼ぶ声>。アンダンテのこの曲は、ほぼ等しい2小節のメロディーを繰り返して開始する。しかし、その下の伴奏は、繰り返される際に半音階的に変化している。
第9曲目は<その小さいのは男の子だった>。この曲では、テンポがアンダンティーノ→アンダンテ・トランクィッロ→アダージョと変化する。伴奏は、シンコペーションによるリズムが特徴的である。
第10曲目は<明日は君の婚礼の日>。ロム出身の農婦、イェンディーネ・スローリエン(1872-1972)の歌う歌が原曲である。そして、彼女自身がテクストを付けている。その大意は、「明日は君の婚礼の日。雄牛や熊がやってくる。僕は鉄砲を贈り、友人が鉄砲で獲物を手に入れる。タンバリンが鳴らされ、雄牛のトゥータが料理をする。」というものである。ユニゾンや並進行が特徴的で、活気に溢れている。
第11曲目は<2人の少女がいる>。厳格な4声体で開始するこの曲は、その後も多声的に書かれている。そして、そのような声部間には時折、並進行が見られる。
第12曲目は<ランヴァイ>。比較的短いこの曲はイ短調で書かれ、冒頭に主音が保続されている。そして、半音階に富んだ下降するバス・ラインの上に同主長調の主和音が響いて曲を閉じる。
第13曲目は<小さな灰色の男>。この曲のテクストは子守歌である。そして、メロディーは上声ないしは下声で歌われる。しかし、音楽はアッレグレットのスケルツァンドである。それは、ノルウェーの民族舞踊の1種、ガンガル(歩き踊り)を思わせる。
第14曲目は<オーラの谷で、オーラの湖で>。これは、オーラ湖のほとりにある牧場で夏を過ごしたある母親とその息子の悲しい物語である。その大意は、「ある日、息子は湖で溺れ、教会の鐘を牧場に運んで鳴らしたが、彼の姿はとうとう見つからなかった。」というものである。メロディーはまず、テノール声部で歌われる。そして、そこには、「ラ・メロディア・ベン・マルカート」と指示されている。
第15曲目は<子守歌>。メロディーはまず中音域で歌われ、低音域、高音域と様々な音域で歌われる。そして、そこには同じ音形による伴奏が付されている。
第16曲目は<小さなアストリー>。「小さなカーリ」と呼ばれることもある。この曲では、テンポではなく拍子が変化する。また、その途中で、低音にオスティナートが見られる。
第17曲目は<子守歌>。アンダンテ・トランクィッロのこの曲は、冒頭と終結部分に保続音が見られる。また、所々に見られる半音階的な音の動きも特徴的である。中間部では、アレグロ・コン・ブリオとなる。
第18曲目は<私は深く思い巡らす>。この曲のテクストは、A. P. ベアグレンのデンマーク民謡集に見出される。その大意は、「私は深く思い巡らす。私は思いの適わぬ人を愛している。彼が楽しげに道を進む時、私は悲しい。こんなにも愛しいあなたが手に入らないとは、大きな悲しみであることだ。多くの嘘つきの人々のせいで。」というものである。そして、比較的規模の大きい曲である。
第19曲目は<イェンディーネの子守歌>。イェンディーネとは、1891年にグリーグが山岳地方へ旅に出た際に出会った乳絞りの女性の名である。グリーグは、彼女が歌った歌を書きとめ、和声づけを行ったとされている。この素朴なメロディーが繰り返される際には、半音階的な和声づけがなされている。