モーツァルトの音楽活動が絶頂期にあった1784年には、6曲ものピアノ協奏曲が生み出された。その4曲目にあたるこの第17番は、4月12日、弟子のプロイヤー嬢のために作曲されたものである。彼女には2ヶ月前にもピアノ協奏曲第14番K. 449が捧げられており、それぞれ《プロイヤーのための協奏曲》第1番、第2番と呼ばれている。
作品は、いかにも女性らしい優しさの感じられる雰囲気の2つの楽章と、独奏ピアノの活躍目覚しい楽章から成るが、どれも管弦楽とピアノの調和がすぐれており、交響的な一体感を感じさせる。
作曲家自身によるカデンツァは、第1、2楽章に2つずつ残されている(どちらの楽章も一方は信憑性が疑われている)。
第1楽章:アレグロ、ト長調、4/4拍子。協奏的ソナタ形式。澄んだ響きと愛らしい主題が楽章全体を支配しているものの、協奏曲としての幅広さも持ち合わせている。
第2楽章:アンダンテ、ハ長調、3/4拍子。小規模な協奏的ソナタ形式。たゆたうような優しいアリオーソ主題から成る楽章。管ののびやかな音と弦の刻みに対してピアノによる主題が映える。
第3楽章:アレグレット、ト長調、2/2拍子。変奏形式。鳥が鳴くような主題と5つの変奏そしてフィナーレから成る牧歌的で活発な楽章。管弦楽を煽るかのようなピアノの激しい動きには拍手喝采だったことだろう。なお、モーツァルトは、作品完成の約1ヵ月後、この主題をさえずることのできるムクドリを見つけて購入した。3年後にムクドリが死んだ際に追悼の詩を書くほどかわいがっていたという。