第4番までは他人の作品を編曲したものなので、実質的には、この作品はモーツァルトの2番目のピアノ協奏曲であるといえる。前作から2年の間をおいて、1776年1月に作曲された。おそらく第5番と同様、モーツァルト自身あるいは姉のナンネルが演奏会で披露するための作品であったと考えられる。この年の前半のうちに、この作品を含めて3曲のピアノ協奏曲が集中的に生み出された。ザルツブルク時代に作曲されたピアノ協奏曲(第5~9番)は1777年からのマンハイム・パリ旅行に携えられ、各地で披露されたようである。
作品はピアノ協奏曲の性格に合致した社交的な明るさを備えている。前作のようなトランペットとティンパニによる派手さはないが、全体的に若々しい活発さをみせ、細やかに動き回るピアノが際立っている。
第1楽章:アレグロ・アペルト、変ロ長調、4/4拍子。協奏的ソナタ形式。「アペルト」とは「明確な、ゆったりと明るく、はっきり」の意。その指示どおり、メリハリの効いた楽章である。
第2楽章:アンダンテ・ウン・ポコ・アダージョ、変ホ長調、3/4拍子。オーボエに代わるフルートの使用や、ヴァイオリンへのコン・ソルディーノの指示に、抒情的なこの楽章に対する音色的なこだわりが窺われる。
第3楽章:ロンド。アレグロ、変ロ長調、2/2拍子。ロンド形式。軽やかなロンド主題に挟まれるエピソードに、ピアノの活躍の場が与えられている。