この曲は、この25の練習曲の中でも最も技術的に困難な曲の1つだと言えます。多くの奏者が左手の16分音符を流暢に弾けないがため、それを理由にテンポを落とします。テンポマーキングは付点4分音符が104とあります。これはかなり速いですね。筆者が録音したテンポとほぼ同じです。しかし、一般的にここまでテンポの速い演奏は今まで聴いたことはなく、多くの場合、左手がもたつくか、ムラが生じるか、粒がそろわないか、あるいはCodaに出てくる右手さえも上手に弾けない場合があります。この16分音符の問題を解決しない限りはこの曲の演奏は難しくなりますので、まず最初にそこから解決をしていかなければなりません。
演奏のヒントというよりは、練習のヒントになりますが、左手の1の指をCの音に置き、伴盤を下に下げ、そのままの状態にして離さないようにします。その状態で、2をH、3をA、4をGに配置します。そしてGとHを同時に弾き、次にAを弾き、それをトレモロの状態にします。GH A GH A GH A というふうに繰り返します。そしてこのGAHの3つの音を、あるとあらゆる可能なコンビネーションで練習します。たとえば単音で、GHAHGHAH AGHGAGHG 等。または先ほどの様に重音を混ぜたり、とにかくありとあらゆる可能性を探して練習します。
もう1つは5の指を混ぜることです。3小節目の左手は1234の4本の指しか使いませんが、5の
指をFに載せ、伴盤を下に下ろした状態にしておきそのまま保ちます。その上で、CHCGAHの16分音符を練習します。5の指を混ぜると更に難易度は増しますが、離したとき、かなり楽になっているケースがあります。
上記のような、練習方法を試し見ても上手く弾けない場合は、根本の筋肉が不足しているという事になります。その場合、ハノン等のエチュードを弾くようにして、特に左手を鍛えるエチュードを弾くようにしなければなりません。相当な練習量と相当な期間(3ヶ月以上)が必要になると思います。
仮に上記の練習が功を奏した場合、3ー4小節間の左手は、pから少しずつクレシェンドをかけていきます。平坦にならないように注意します(7小節目の左手 Aに向かっていく感じを出します)。