リスト : 巡礼の年 第2年「イタリア」 「ペトラルカのソネット 第104番」 S.161/R.10-5 A55
Liszt, Franz : Années de pèlerinage deuxieme année "Italie" "Sonetto 104 del Petrarca" S.161/R.10-5
作品概要
解説 (2)
解説 : 伊藤 萌子
(269 文字)
更新日:2019年1月9日
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解説 : 伊藤 萌子 (269 文字)
第4番から第6番は、イタリア・ルネサンスを代表する叙情詩人、フランチェスコ・ペトラルカ(1304-74)の代表作である『カンツォニエーレ』より。『カンツォニエーレ』はペトラルカがラウラへの愛を歌ったもの。また、ソネットとはイタリアで生まれた14行の定型詩を言い、「小さな歌」を意味しており、ペトラルカとダンテによって完成された。リストは第47番、第104番、第123番を採り上げて作曲した。
第5番「ペトラルカのソネット 第104番」の詩は恋に落ちた喜びと苦しみの二面を歌うもの。先の曲よりドラマティックであり、単独で演奏される機会も多い。
演奏のヒント : 大井 和郎
(1509 文字)
更新日:2018年3月12日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1509 文字)
5. ペトラルカのソネット 第104番
この104番は、3つのピアノに編曲されたソネットの中では技術的にも音楽的も最も難しいソネットかもしれません。この104番は他のソネットよりも華やかな魅力がありますが、教師の皆様は学習者に対してまず、123番や47番など比較的技術が楽なソネットを最初に与えて様子を見た方が無難かと思います。123番や47番が決して易しいという意味ではなく、この104が異常に難しいという意味です。ここから先、このソネットを弾けるだけの技術と音楽歴を備えた学習者を対象にお話ししたいと思います。
このソネット104がうまく弾けるか弾けないかは最初の4小節で決まると言っても過言ではないほど、最初の4小節は冒頭いきなり難易度の高い部分です。多くの人は左手の10度が届かないので、分散することになりますが、何しろテンポがAgitato assaiですので、かなり速く進みます。ここは強い左手の5の指が必要となる部分です。音楽的にも、右手のオクターブはペダルが濁らないように弾かなければなりません(内声も)。
そしてこのソネットは、レチタティーヴォ(独唱の部分)というものを理解してなければなりません。例えば6小節目、その即興性が必要となる部分です。歌手の歌い方をできる限り真似てください。さてここから先、メロディーラインのシェーピング方法を助言いたします。7小節目から始まる主題ですが、まず、10小節目の3拍目、Aまで単旋律でペダルを入れて弾いてみてください。ここまでのフレーズは2つに分けることができ、1つ目は8小節目の3拍目、Eまで。それ以降が2つ目になります。1つ目のフレーズのゴールを、8小節目1拍目のGisに持っていきます。7小節目から数えると、丁度4つ目のGisになります。7小節目のダイナミックマーキングはフォルテですが、ゴールが8小節目に待っていますので、あまり大きくは始めません。そして8小節目のGisに引き寄せられるように向かってみてください。そして8小節目のGisに達したら、あとはゆっくり衰退してください。
次に2つ目のフレーズですが、9小節目1拍目裏拍にはオクターブ上のEが待っています。ピアノという楽器は、オクターブに達するのに瞬間的に達することができるほど容易い楽器ですが、歌の人たちが大きな跳躍をするとき、かなり時間がかかります。それを真似て、オクターブ高いEには時間をかけて達してください。そしてまたそのEは決して大きすぎてはいけません。この2つ目のフレーズのゴールはこのEと考えても良いですし、10小節目1拍目のHと考えても構いません。もう1つの注意点は、9小節目3拍目裏拍から4拍目にかけて登場する8分音符3つです。この3つの8分音符は1つの流れで一気に弾きます(勿論ここだけ速くということではなく、1つ1つの8分音符に力をかけないという意味です)。
10小節目のHに達したら、あとは徐々に半音階が下行するに従い、ゆっくり衰退します。これがこのソネットの基本的なシェーピング方法です。これを基本にして、後に出てくる多くの主題に使うのですが、勿論主題は色々な形になって表れます。例えば、stringendoと書いてある主題もありますし(46小節目)、rallent dolce dolenteと書いてある主題もあります(50小節目)。その場その場の状況に応じてムードを変化させます。
技術的なサポートとしては、44小節目、3度が始まり、左手のHFisADisを弾いたらすぐ左手で、右手の3度の下の部分の音を担当します。そうすることで、3度がより安全に演奏できます。
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