リスト : 巡礼の年 第2年「イタリア」 「ペトラルカのソネット 第47番」 S.161/R.10-4 A55
Liszt, Franz : Années de pèlerinage deuxieme année "Italie" "Sonetto 47 del Petrarca" S.161/R.10-4
作品概要
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:7分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (2)
解説 : 伊藤 萌子
(337 文字)
更新日:2019年1月9日
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解説 : 伊藤 萌子 (337 文字)
第4番から第6番は、イタリア・ルネサンスを代表する叙情詩人、フランチェスコ・ペトラルカ(1304-74)の代表作である『カンツォニエーレ』より。『カンツォニエーレ』はペトラルカがラウラへの愛を歌ったもの。また、ソネットとはイタリアで生まれた14行の定型詩を言い、「小さな歌」を意味しており、ペトラルカとダンテによって完成された。リストは第47番、第104番、第123番を採り上げて作曲した。
ほぼ同時期に歌曲(S.270)としても作曲されており(同一の旋律を持つ)、両方とも1846年に出版された。現在知られているのはその改訂版である。
第4番「ペトラルカのソネット 第47番」の詩の大意は恋にとらわれた心情を歌ったもの。その内容を受け、甘美な雰囲気を持つ美しい曲となっている。
演奏のヒント : 大井 和郎
(1381 文字)
更新日:2018年3月12日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1381 文字)
4. ペトラルカのソネット 第47番
技術的側面では3つのソネットの中で比較的弾きやすい曲ではありますが、音楽的理解が難しい曲です。この曲のキーワードは「裏拍」です。何故リストはこの曲で裏拍を多く使っているのでしょうか。まずその理解から始まります。これは後述します。
そして、この楽譜に書かれている表示や用語を全部理解します。冒頭、con motoと書かれており、左手が始まる部分にはritenutoと書かれています。しかし先に a tempoは無く、さらに4小節目の終わりにrallと書いています。途中、molt cresc が書かれ、音符が徐々に上行している事から判断し、ゆっくりからスタートしてかなり加速し、再びゆっくりで終わる事が想像できます。
13小節目から始まる歌の部分には、il cantoと書かれていますので、その場所はわかりますね。レチタティーヴォの後、12小節目よりリストは、Sempre mosso と書いています。つまり常に動きをつけるという事です。果たしてこの曲は、ゆったり、ゆっくり、流れる曲では無く、常に動いていなければならない曲です。そこでやっと「裏拍」の意味が理解できます。裏拍からメロディーラインが登場する曲は、agitatoである事がよくあります。独特な躊躇とでも言いますか、 表拍から始まるよりも緊張感があり、agitationがあり、落ち着きません。その「落ち着きなさ」を表現しなければなりません。奏者はそれを頭において、常に動きを付けます。
メロディーラインの基本的なシェーピングは、例えば、13小節目2拍目から始まる主題は、15小節目の2分音符がピークとなりますので、ルバートはこの2分音符に向けて前へ進み、2分音符に達したら後ろへ引っ張るようにします。以下同様です。Des-durから始まる最初のセクションは、35小節目をピークポイントと考えます。フォルテは決して遠慮がちにならないように。
36小節目から始まる次のセクションはG-durから始まりますが、44小節目からドラマがあり、シークエンスを辿りながら、48小節目でピークを迎えます。それまでの表示はcresce moltです。44-48小節間、音量を最大限に上げていきます。絶大なるドラマがあり、それは常に落ち着かなく、感情的です。聴いている人たちがおかしくなりそうな位にagitatoでピークに達するようにします。
ペダリングは、楽譜に書かれてある通りで良いと思います。例えば22小節目から23小節目までを例に取りますと、歌のラインは22から23に繋がれていますが、23小節目のペダル指示通りに踏みかえると、メロディーラインが丁度表拍の部分で8分休符により切れてしまいます。ここからは筆者の個人的見解になりますが、筆者は23小節目でペダルを踏み変えた時、メロディーラインが切れても良いと考えています。26-27小節間を見た時、今度はタイで繋がれていることがわかりますね。タイでつないでいるラインと8分休符を入れてくるラインでは、ニュアンスが異なると考えますし、作曲家の何らかの意図があるはずです。勿論奏者によっては、フィンガーペダルによって休符が入っているのにも関わらず、メロディーラインをつなぐ奏者もいますが、これはこれで1つの考え方であると思います。
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