ラフマニノフ : エチュード(練習曲) 「音の絵」 第7番 Op.39-7 ハ短調
Rakhmaninov, Sergei Vasil'evich : Etudes-tableaux Lento lugubre c-moll Op.39-7
作品概要
解説 (1)
解説 : 山本 明尚
(607 文字)
更新日:2020年1月23日
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解説 : 山本 明尚 (607 文字)
ラフマニノフの解説によると、「葬送行進曲」。確かに冒頭から様々な調で繰り返される付点音形のリズムは、重々しい葬送行進曲のそれである。長くなるが、ラフマニノフ自身もこの楽曲の解釈の難解さは自覚していたようで、レスピーギに宛てて詳細な解説を付け加えている。やや長くなるが引用しよう。曰く、「主要主題は行進曲で、もう一つの主題は合唱による歌唱です。ハ短調と、そのあと変ホ短調の16分音符で動き始める場面は、絶え間なくどうしようもない小雨を連想しました。この運動が発展していき、ハ短調のクライマックスに至りますが、これは鐘の音です。最後の部分は最初の主題、あるいは行進曲です」。この解説をそのまま楽曲に当てはめると、三連符を交えて副次主題的に現れる並行和音(第26小節以降)は葬礼の合唱ということになろう。「雨」の場面は39小節以降で、16分音符のセンプレ・スタッカートが音空間を支配する。この雨の音が次第にボリュームを増しながら、転調とともに荘厳できらびやかな鐘の音へと変貌する。そして雨とともに、冒頭の行進曲が回帰して終わる、という具合だ。
以上のようなプログラム性を拡大解釈し、批評家マックス・ハリソンはこの楽曲の「雨」のシーンは1915年のスクリャービンの葬儀の記憶に霊感を受けているという(信憑性はともあれ)興味深い説を唱えている。実際、4月16日に行われたスクリャービンの葬儀には雪混じりの冷たい雨が降っていた。
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