Andante grazioso, quasi allegretto 歩く速さで優雅に、アレグレット(やや快速に)のように
複合三部形式。主部(第1~32小節)はロンド風に素朴な旋律が繰り返され、その度に軽やかな装飾が加えられ、変奏されていく。中間部(第33小節目アウフタクト~第50小節目)は同主調である変ホ短調に転じるが、深刻で重々しい短調ではなく、さらりとした洒脱な陰りである。二度挿入されるユニゾンが、浮遊するような不思議な感覚をもたらす。第43小節目からのcresc. と、弱拍に付されたsfに煽られ、第44小節目でこの曲の最高音ファに到達する(当時の楽器の音域は5オクターヴ程度だったため、楽器の最高音はこのfかgであった。楽器の端の鍵盤という特別な意識を持って弾くことが求められよう)。第45小節目へのタイで緊張が解け、右手の音階で主調に戻っていき、第51小節目で主部に回帰する。コーダ(第83小節目アウフタクト~)は短く単純なスケールやアルペジオを左右で会話のように掛け合い、明快に終わる。