バッハ :ジグ ヘ短調 BWV 845
Bach, Johann Sebastian:Gigue f-moll BWV 845
執筆者 : 朝山 奈津子 (308文字)
現在では偽作とされる。《アルマンド ハ短調》(BWV834)とともにベルリンの国立図書館に所蔵される資料(P 314)にのみ伝えられる作品。旧全集の校訂報告にはすでに「比較的新しい筆写譜、ぞんざいであまり信頼できない」と述べられている。が、真の作曲者はまだ明らかでない。
冒頭は右手が先行して模倣で始まるが、複雑な対位法は展開しない。ジーグの闊達なリズムがきわめて明確で、音域とテクスチュアの変化が簡明な2声部に色合いを与えている。バッハの作でないとしても、演奏者、鑑賞者ともに楽しめる小品といえるだろう。
バッハ新全集には収載されず、校訂譜も多くはない。信頼できる楽譜は旧全集第42巻263-264頁に提供されている。