ダルムシュタットの宮廷楽長ヨハン・クリストフ・グラウプナー(1683-1760)作《パルティータ》の第2・3楽章。19世紀前半に作成された筆写資料においてバッハに帰せられたが、今日では真の作者が明らかになっている。
いずれもきわめて平易な曲だが、細かな変化に富んでいる。
アルマンドは、16分音符の動機の連続が転調の装置となる。前半では2回、長いフレーズが現れ、2回目で属調へ転じる。後半は、長いフレーズと短いフレーズとを組み合わせ、fis-Moll、cis-Moll、h-Mollの近親短調を通過してゆく。動機の反復が引き起こす霍乱効果がうまく使われている。
クーラントは、左右のリズムのかみ合わせが巧みで、3拍子を規則的に刻みながらも単調になることがない。第7小節後半、この3拍子が1度だけ途切れる瞬間には一種の緊張感が生まれる。
演奏は決して難しくないが、よく整った作品である。