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バッハ : シンフォニア 第5番 BWV 791 変ホ長調

Bach, Johann Sebastian : Sinfonia Nr.5 Es-Dur BWV 791

作品概要

楽曲ID:22617
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:1分20秒
著作権:パブリック・ドメイン
ピティナ・コンペ課題曲2025:D級

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:応用4 応用5 応用6 応用7 発展1 発展2 発展3 発展4

楽譜情報:42件
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解説 (3)

解説 : 髙松 佑介 (206 文字)

更新日:2020年9月18日
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変ホ長調、3/4拍子。

低声部は一定の音形を繰り返す固執低音(バッソ・オスティナート)となっており、2つの主要声部(オブリガート)と通奏低音から成るトリオ・ソナタを想起させる。2つの主要声部は、一見すると一定の和声の支えに乗って自由に奏でているようだが、中声部は上声部の模倣となっており、対位法を駆使して書かれていることが分かる。

楽曲全体は、第17小節から後半部が始まるという、均整の取れた2部分で構成されている。

執筆者: 髙松 佑介

楽曲分析図 : 林川 崇 (100 文字)

更新日:2018年3月15日
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一定の動きをする下声部に乗って、上二声部が模倣を繰り返す形式のため、下声部の記載は省いた。 また、模倣には便宜上番号を振ってある。

譜例提供:  ベーレンライター(Bärenreiter Verlag)

執筆者: 林川 崇

演奏のヒント : 大井 和郎 (2365 文字)

更新日:2018年3月12日
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シンフォニア 第5番 変ホ長調  極めて異例なシンフォニアですね。バスとソプラノ・アルトはフーガになっていませんね。このシンフォニアは如何に即興的に演奏できるかという事も大事な要素になります。さて、その前に、このシンフォニアには2つのヴァージョンがあり、モルデント有りとモルデント無し(12小節目のみ例外)に分かれます。まず最初にモルデント無しヴァージョンを勉強してからモルデント有りヴァージョンに進んでも良いと思いますがそれは自由です。ここから先は、装飾有りヴァージョンの方のお話になります。  以前にもお話をしましたが、ヘンレー版に書かれてあるトリルはサイズが2種類あり、大と小に分かれます。大きく書かれているものは必ず弾かなければならなく、また小さく書かれてあるモルデントは奏者のオプションとして、弾いても弾かなくてもどちらでも良いとされています。このお話は、単音の装飾音とごっちゃになってしまうので、確認のため冒頭4小節を使って説明をしてみます。  1小節目、見えるのはサイズの大きなトリルとターンですので、これは確実に弾きます。2小節目、1拍目の右手の4分音符Dの前に書かれてあるEsはトリルではありませんのでこれは弾きます。3拍目内声のトリルとターンも同じです。3小節目、1拍目、右手、ソプラノとアルト両方に装飾音がありますのでこれは弾きます。3拍目も同じです。4小節目、1拍目、同じく右手の装飾音2つを弾き、3拍目に至ってサイズの小さなトリルとターンが出てきますね。装飾音であるDは弾きますが、ソプラノとアルト両方同時に書かれてあるトリルとターンは演奏してもしなくても良いという事になります。  これほど多くのトリル、ターン、装飾音を弾くのですからある程度の時間は必要になります。そうなると自ずとテンポが決定されますね。これらのモルデントを弾く事で無理のないテンポ設定にしてください。そして、場所によっては、他の場所よりもトリルやターンなどに時間を食う場所も出てくると思います。筆者は、このシンフォニアに関してはそれは全く構わない行為であると考えています。  さて、このシンフォニアを分析すると、3つ、または4つに分ける事ができます。それは左の音形が変わる場所になり、そこが終止の形となるからです。左手の音形を見ると、16分休符1つのあと、16分音符3つが1拍目に入り、2拍目と3拍目は4分音符が入ってきます。そしてこのパターンがほぼシンフォニア全体に書かれてあります。しかしこのパターンが崩れるところが終止になります。場所は11-12小節間。そして同じ音形が、27-28小節間にあります。こうなると、この曲は、2つの終止がありますので、3つに分かれる事になります。先ほど4つとも言いました。それに関しては後述します。  仮に3つに分けたとします。注目して頂きたいのは終止に入る2小節前で起こっている事です。9小節めの2拍目右手Gから10小節目のCまで、10小節目2拍目右手Asから11小節目Dまでの2つは上行形のシークエンスですね。とてもテンションの高まる部分で、最終的にC-mollに移調します。  そして2つ目の終止の2小節前。25小節目2拍目右手のCから始まり26小節目Desまでと、26小節目2拍目右手Fから27小節目1拍目Gまでは、やはり上行形のシークエンスです。これら2箇所の分岐点に来る時は、必ず上行形のシークエンスが入ってくるのでね。1回目と2回目を比較したとき、1回目は上行してC-mollに移調しますが、2回目は上行してもf-mollからAs-durに移調する、どちらかというとテンションが緩む部分であると思います。2つの終止はそのような意味から、音形はそっくりですが、異なったキャラクターとして感じてください。  さて、この曲を仮に4つに分けた場合の話です。今お話をした、11-12小節間、27-28小節間は左手の音形が異なるとお話ししましたね。ところがもう1箇所音形の異なる小節があります。それが、24小節目になります。この小節の左手は下行していますね。これは今までに無かった音形です。  この部分で曲はF-mollに移調しますので、ここも終止と考えても構いません。そして更に、1-12小節目までを1つの括りとするのであれば、その小節数は12小節になります。ところが、13小節目から12小節間を進むと、丁度先ほどの音形が変わるところ(24小節目)がその小節になります。つまりは、3つに分けたとき、2つ目は1つ目よりも小節数が多いと言う事になります。  奏者は自分の判断、または先生の判断により、曲を3つまたは4つに分割し、その中での出来事を考えるようにしていきます。例えば、1小節目から12小節目までが最初の括りです。この中でテンションの最も高まる部分はどこになるのか、そしてそこまでの道のりはどうするべきかも考えます。  例えば、メロディーラインだけ辿ると、Es F Es D という音のグループが1-2小節間にあり、Des Es Des C というシークエンスの下行が2-3小節間にありますね。F G F Esが3-4小節間にあり、Es F Es D が4-5小節間にありますね。この4つのシークエンスはそのようなダイナミックにすれば良いでしょうか。  また、その先のDGGCが5-6小節間にあり、CFFBが6-7小節間にあります。そして、9小節目でEsdurに落ち着きます。ここからは先ほど話をした上行形のシークエンスが始まりテンションが高まり、C-mollに転調する部分になります。奏者はこれらのシークエンスを、音の高さ、和音の種類などを鑑み、理にかなう進め方を考えてみてください。

執筆者: 大井 和郎

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