バッハの書くg-mollを思い浮かべたとき、シンフォニアや平均律曲集等、悲しみの表現が感じられます。インベンションの11番は、速いテンポで弾く奏者もいて、速く弾くとエネルギーを感じる曲になるのですが、中間部に書かれてある全ての装飾音は、速いテンポではほぼ演奏不可能です。察するに、インベンションの11番もこの曲も、実は遅いテンポで弾かれたのではないかと想像できます。
故に、エネルギッシュに淡々と弾くのではなく、ゆっくりとしたテンポで、悲しみを感じ、表現して下さい。
3声で書かれていますので、声部の独立は欲しいところです。2つの声部が同じ音価の音符を演奏する部分、例えば11小節目、バスとアルトはどちらも4分音符が3つ書かれていますので、片方をセミスタッカート、もう片方をレガートにするような工夫をすることで、声部が独立して聞こえます。
このようにアーティキュレーションで工夫したり、あるいは、5小節目の右手8分音符はソプラノで、6小節目の8分音符はアルトですので、アルトはソプラノよりも音質を柔らかくすることで、5小節目との声部が異なることを聞かせられますし、6小節目のソプラノFの伸びを邪魔することを軽減します。