バッハ : フーガ(アルビノーニの主題による) イ長調 BWV 950
Bach, Johann Sebastian : Fuge über Thema von Tomaso Albinoni A-Dur BWV 950
作品概要
出版年:1866年
初出版社:Peters
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:フーガ
総演奏時間:5分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (2)
執筆者 : 朝山 奈津子
(652 文字)
更新日:2007年10月1日
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執筆者 : 朝山 奈津子 (652 文字)
主題の出典は、アルビノーニの『トリオ・ソナタ集』Op.1(ヴェネツィア、1694)の第3番第2楽章で、元はヴァイオリン2本と通奏低音による曲である。バッハは主題以外にもいくつかの素材を借用した。たとえば冒頭第3小節、主題に続く16分音符は、原曲では対位主題として用いられた旋律である。が、バッハはこの作品で明確な対位主題を設定していない。むしろ、つぎつぎ現れる主題をくっきりと聴かせつつ曲を劇的に進めるため、広い音域にわたる簡明なテクスチュアを選択している。お陰で、いわゆる「主題の入り」は、奏者が特別に力を込めなくとも、声部の増減や瞬間的な音域の変化によって明確になる。全体は主題の提示を中心に組み立てられ、主題素材の念入りな展開や複雑な対位法技法などは見られない。主題がトリルを伴って終止すると、続く部分は早くも次の主題を準備するために走り出すのである。
息をつかせないような奔流は、第75-79小節のストレッタでクライマックスを迎え、第85-88小節の分散和音を経てたどり着いた属和音で、緊張感を保ったまませきとめられる。休符のあとは、もはやおし留めることの叶わない勢いで鍵盤を端から端まで駆け巡り、低音のペダルポイントの上ではさらに激しさを増す。この目くるめく加速感は、ドイツの鍵盤音楽の伝統に典型の終結の手法である。ただし残念なことに、現代のピアノでこのペダルポイントと分散和音のフィギュレーションを完全に演奏することはきわめて困難で、ソステヌート・ペダルを活用するか、音域を変更する必要がある。
演奏のヒント : 大井 和郎
(386 文字)
更新日:2023年11月20日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (386 文字)
バッハがA-durで曲を書く場合、同じA-durの、平均律曲集第2巻のフーガ、インベンション12番、シンフォニア12番、などを思い浮かべると手に取るように楽しさがわかりますね。このフーガも、これ以上楽しいことは無い位に楽しさと上機嫌で満ちあふれています。故に、生き生きと演奏することと、ある程度速いテンポで進む事は必須条件になります。アーティキュレーションは、故に、8分音符をスタッカートで演奏して問題は起こりません。
テーマ(主題)そのものが、裏拍から始まることにも注目してください。表拍の休符を拍の頭として感じながら演奏することが望ましいです。故に、少しアクセントをテーマの最初の音に付けても良いでしょう。
最後10小節は、即興的に、自由に楽しく演奏するカデンツです。ここはむしろ拍に束縛されないように、テヌートや、テンポの引き延ばしなど、赴くままに演奏してみてください。