作品概要
解説 (1)
演奏のヒント : 大井 和郎
(1220 文字)
更新日:2023年4月16日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1220 文字)
このプレリュードのピークポイントは21小節目、つまり最後の小節とお考え頂いて良いです。もちろん、そこにたどり着くまでにもいくつもの山はあります。
解説の前に、B-durという調性を知っておきましょう。B-durはC-durにムードが似ている部分もありますが、C-durよりも一段階きらびやかで、おしゃれな感じがします。インベンションの14番、シンフォニアの14番、平均律、等を思い浮かべて下さい。決してF-durのように強いキャラクターの調ではありません。B-durはおとなしく、気品のある調だとお考え下さい。
まずは冒頭から。Bのペダルポイントをベースに、右手旋律がスケールをたどって上行していきます。2小節目の3拍目で最高音のBに達します。そこまでの方向性を持たせましょう。3小節目、シークエンスで下行していきますので、徐々にディミヌエンドをかけ、4小節目の3拍目まで降りてきますが、2拍目で右手の旋律はスケールを辿って上行しています。ここをどのように扱うかは奏者の自由です。細かい音符ですので急激なクレシェンドは避けた方が良いかもしれません。
4小節目3拍目、F-durに転調して主題が出ます。左手に出ますがやはり上行していき、最高音であるFに5小節目の1拍目で達します。先ほどはそこからシークエンスを辿って下行していきましたが、今度は上行して4拍目でEにフラットが付き再びB-durに戻ります。この辺り、なんか気持ち的に落ち着かないですね。バス音がないからです。バスが旋律を奏でているため、不安定な感じがします。
そして細かい動きをするバスは、8小節目の4拍目でg-mollに転調します。11小節目で再びF-durに転調。12小節目からはF-durのドミナントが続きます。このように、ずっとドミナントが続くのも何か落ち着かないですね。気持ちはトニックに行きたいですね。トニックに達するのは、カデンツを経て、14小節目の1拍目で達します。
そこからEs-durの予感もさせたりしますが、16小節目でB-durに戻ります。ところが17小節
目から再びバスが旋律を奏でます。何か大きな事が起きるような予感さえします。この17~18小節間、明らかにB-durのドミナントの感じであり、ここはドミナントが続くだけではなく、バスが旋律を奏でている、「2つの落ち着かない要素」が重なっている部分です。再びドミナントが続く落ち着きのなさを感じますが、18小節目4拍目でカデンツを迎え、19小節目に至り、正真正銘B-durに戻り、トニックの和音から1小節目と同じ旋律を奏でます。
しかしながら19小節目3拍目以降、音数が増え始め、層は厚くなり、パイプオルガンの全ての音が大音量で鳴るように、ドラマティックなエンディングとなります。これが前述しました、21小節目に向かうという事です。
ダイナミックは奏者の自由ですが、これまでの経緯を参考に、曲を組み立ててみて下さい。
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