バッハ :フランス組曲 第1番 アルマンド BWV 812

Bach, Johann Sebastian:Französische Suiten Nr.1 Allemande

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:アルマンド
総演奏時間:2分00秒
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解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1612文字)

更新日:2018年3月13日
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このアルマンドに限らず、全ての組曲のアルマンドは演奏上、声部の独立が大変むずかしく、まずここから解決していくことをお勧めします。解決するというのは、まずどの声部がどの位置にあり、どのようなラインを辿っているかしっかりと見極めることです。フーガなどのしっかりした3声体や4声体などとは異なり、組曲のアルマンドの場合、時には5声に、時には2声にと声部の数が変化します。どのように複雑な部分に直面しても、それぞれの声部を把握しておきましょう。

本当であれば、フーガの練習のように、各声部を抜粋して単旋律で弾いてみたり、任意の2つの声部を抜粋して2声にして弾いてみたりして、それぞれの声部の分担を耳から覚える事が大切ですが、それが面倒だと思う学習者の方はせめてソプラノだけでも把握しておきましょう。ソプラノはト音記号内で、最も上に書かれてる声部で、「棒」の方向が全て上を向いています。このソプラノだけでも何回か弾いて耳に叩き込みましょう。

各声部を認識しましたら、次は強弱に関して考えます。このアルマンドは全部で24小節あり、前半12小節、後半12小節ときれいに2つに分かれています。2部形式ですね。そして前半と後半で分けて考えます。まず前半のピークポイントはどこにあるかを考えます。

これから先にお話しさせて頂くことは例外も多くあるのですが、一般的にバッハの場合、音が高い位置にあれば感情面が高ぶり、低い位置にあれば感情面が落ち着くというふうに考えて良いと思います。これからお話しする分析方法ですが、多少慣れも必要になります。この分析を参考にして、他の曲にもお役立て下さい。

冒頭、ソプラノではないのですが、アルトがト音記号の高い方のDから始まります(1小節目1拍目最初の右手の音)。2小節目、4拍目にソプラノはAの音に達します。3小節目でGに下り、後4小節目でBからAに下がり、5小節目1拍目でGに下がり、3拍目で G F E D と、冒頭と比べ、1オクターブ下のDに下がります。おそらくここが前半で最もテンションが下がり落ち着くところではないかと思います。

この小節から先、6小節目2拍目でEsに達し、7小節目4拍目でEに上がり、8小節目3拍目でGに上がり、9小節目、この前半では最も高い音であるBに達します。そしてそこから前半最後の小節では(12小節目)、3拍目でAに達しますのでテンションはあまり下がりませんね。それどころか、左手を見てみると、11小節目3拍目よりAのオクターブが2分音符で書かれてあり、タイで12小節目に伸ばされていますね。これはオルガンポイントと呼ばれる音で、パイプオルガンの低い方のパイプが鳴り続けているイメージになります。実際鳴り続けたと思います。このような書き方をバッハがする場合、強弱的には割と大きめの場所であると考えて良いです。

前半最終の和音はドミナントですからなおさらですね。12小節目、2拍目の和音はGis H D F で、3拍目がA Cis Eですから、本来であれば3拍目は解決部分にあるのですが、ここを逆に考え、3拍目を2拍目よりも多少大きくしてもそれは可能性としてはあると思います。

後半1小節目(13小節目)、前半最後の和音を受け継ぐ形でドミナントから始まります。そしてめまぐるしく調が変わり、17小節目でg-moll、19小節目で再びオリジナルのd-mollに転調します。

後半のダイナミックはほぼ奏者に委ねられて良いのでは無いかと思います。奏者が(あるいは教師が)感じるようなダイナミックを付けていけば良いですが、筆者が感じるダイナミックの大きな小節は、15小節目4拍目から16小節目3拍目まで、19小節目、23小節目、などです。特に19小節目は、左手と右手の位置が遠く離れていますし、バッハがテンションを高めるときに用いる細かい音符等を鑑みたとき、決して落ち着ける部分では無いと思います。

執筆者: 大井 和郎

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