ドビュッシー :プレリュード(前奏曲)集 第2集 カノープ
Debussy, Claude Achille:Préludes 2 "Canope"
解説 : 白石 悠里子 (663文字)
カノープとは、古代エジプトの都市名に由来するミイラの臓器を収める壺のことを指す。ドビュッシーは自身の机にその壺を飾っていたという。その標題からイメージされるように、この曲はpやppの指示を伴いながら常に穏やかで寂しげな雰囲気を保っている。全体は短い33小節ながら、3つのモチーフと2つの経過句によって構成される[5]。厳かな平行和音によるモチーフa(第1-6小節)は、平行和音で〈沈める寺〉(《前奏曲集》第1集第10曲)の中間部を思い起こさせる。一方、モチーフb(第7-10小節)はバスの保続音と半音階的な旋律によって、モチーフaとは異なるテクスチュアを見せる。モチーフc(第11-15小節)では、半音階的旋律にバスの平行和音が加わり、a、bモチーフが融合されていく。広い音域の中を和音が行き交う第1経過句(第16-19小節)に続いて、第20-23小節ではモチーフbが再登場する。そして、第2経過句(第24-25小節)ののち、第26-29小節ではモチーフaが再現され、第30-33小節ではモチーフcによってゆったりと楽曲が閉じられる(見取り図)。
【見取り図】 [1]
[1] この見取り図はBourionの以下の文献に基づいている(Bourion, Sylveline. 2011. Le style de Claude Debussy : duplication, répétition et dualité dans les stratégies de composition, Paris: Vrin, p. 440)。
プレリュード(前奏曲)集 第2集 10. カノープ