ドビュッシー :プレリュード(前奏曲)集 第1集 野を渡る風
Debussy, Claude Achille:Préludes 1 "Le vent dans la plaine"
解説 : 白石 悠里子 (349文字)
ドビュッシーは、1887年にヴェルレーヌの詩に基づく歌曲〈やるせない夢心地〉(《忘れられた小唄》第1曲)を作曲し、そこで劇作家シャルル=シモン・ファヴァール(1710-1792)の詩句「野を渡る風はそのそよぎを止める」[1]をエピグラフとして用いた。「できるだけ軽く」という指示のもと、疾走するアルペッジョの連続の間から、付点リズムの主要モチーフが顔を覗かせ、次の瞬間に落ち葉のごとく和音の連続が舞い降りる(第1-12小節)。ここで一旦、冒頭のアルペッジョと付点リズムのモチーフが戻るが(第13-27小節)、和音のアタックが挿入されることで、楽曲にダイナミズムが加わる(第28-34小節)。第34小節からはアルペッジョと付点リズムのモチーフに戻り、最後はそよぐ風のごとく浮遊感を漂わせて閉じられる。
プレリュード(前奏曲)集 第1集 3. 野を渡る風