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グリーグ : 抒情小品集 第1集 アリエッタ Op.12-1

Grieg, Edvard Hagerup : Lyriske smastykker No.1  "Arietta" Op.12-1

作品概要

楽曲ID:21051
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:性格小品
総演奏時間:1分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:応用4 応用5 応用6 応用7 発展1

楽譜情報:14件
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解説 (2)

演奏のヒント : 大井 和郎 (495 文字)

更新日:2024年6月17日
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テンポの問題が重視される曲です。冒頭には、poco andante e sostenutoと書いてありますので、少しアンダンテ=少しゆっくり 音を十分伸ばして という意味になります。さてそれではどのくらいのテンポかという議論になりますが、筆者が助言をするのであれば、

1  2小節間、タイによって伸ばされているバスが聞こえなくならないような速さが望ましい事。

2  4つの同じ音によるメロディーが、シェープしやすい程度のテンポを選ぶこと、例えば1小節目のGGGGは、4つとも同じ強弱とタイミングによって機械的になりがちですので、この4つの同じ音を異なった強弱とタイミングで弾きたいのですが、あまりにもテンポが遅いとそれが難しくなります。

これらの条件を踏まえてテンポを決定することをお勧めします。

9~10小節間のような終止形は、この曲中、全部で4つ出てきます。2小節目(9~10小節間で言えば10小節目)の和音によってムードを変えてください。

最後の小節は、曲の途中で終わってしまう感じですね。夢うつつのイメージで、情景が消えていくような心理状態の描写です。本当に消えていくように演奏してください。

執筆者: 大井 和郎

解説文 : 熊本 陵平 (842 文字)

更新日:2025年1月16日
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単一主題による複合一部形式である。

A[a /主題(1から4小節)+b /主題展開(5から8小節)+c /終結(9から12小節)]

A1[a(13から16小節)+b1(17から18小節)+c1(19から22小節)]

コーダ/主題断片(23小節)

 a楽節とb楽節は関係性の深い楽節で、構成としては主題の提示から主題の展開という流れになっている。

主題の特徴は、声楽的な八分音符による同音反復があって、次小節の二重倚音に向かって緊張感を高めていく。この主題2小節目の二重倚音に配置される和音は準固有和音の属9(根音省略)であり、倚音による緊張感と共に翳りが感じられて美しい。

 c楽節は一見するとよく似た旋律が反復されるわけだが、和声は異なっていて興味深い。前半はg mollで、Ⅳ付加6→属9→Ⅵという偽終止なのだが、後半では転調してEs durとなり、同じくⅣ付加6(同じⅣ付加6だが、調性が違うので構成音も異なる。)→属音上のⅢ調上属9→Ⅰ(バスに属音を保続音とした状態で和声解決される)というふうに全終止となる。

 伸びやかに上行していく様はまるでバレエにおけるアラベスクを見るようなノーブルな表現である。

13小節から主題が再現されるのだが、この時に二つの16分音符による前打音がある。冒頭の主題と異なる点はもう一つあって、主音esがバスで1オクターヴ低く鳴らされることである。この二つの変化は主題の性格を強調するためのものであるから、ルバートの範囲内でやや時間をとって演奏しても良いと考える。寧ろ楽曲全体の性質を考えると、この前打音を音価通りに演奏することはその性質にそぐわないかもしれない。

 最後に、23小節では主題の断片が再現されている。まるで眠りにつくかのように、途中で終わっている。極めて詩的な瞬間である。

執筆者: 熊本 陵平

楽譜

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