実に様々な弾き方がありますが、筆者の独断と趣向により演奏のヒントを書かせて頂きます。楽譜全体を見ますと、Allegro Moderatoの他、左手に全音符が並んで伴奏の役割を果たしています。
所謂ホモフォニーの傾向ですね。右手のメロディーは、拍の頭に必ず音符が書いてありますので、拍を刻みがちで、要するに縦割りの音楽になりがちです。そのような解釈をされる方はそれはそれで良いのですが、筆者はこの音楽は横に流れて然るべきと考えています。音楽を横に流すにはどのような工夫が必要でしょうか?
1 左手の伴奏系の全音符や2分音符はできる限り柔らかく弾く。仮に左手の3和音が3声と考え、チェロやヴィオラが奏でていると想像してみて下さい。その時、1拍目の表拍に強烈なアタックは必要ありませんね。そして横に切らずに流すためにはペダルが必須となります。ペダルによって和音と和音の切れ目を無くします。このペダルに関しては後術します。
2 右手のメロディーラインはレガートで弾くことが必須となります。飛び出す強烈な音が無いように、緩やかに横に流します。
さて、そこで音楽を横に流すためにペダルを使用するわけですが、どのように踏めば良いのでしょうか?この曲は1ー2小節間と最後の小節を除き、全ての小節に半音進行があります。
つまりは、踏み続ければ濁る事になります。筆者の助言ですが、この曲には2つのペダルの踏む方があります。
1つは、各小節(もちろん例外もあります)3ー4拍間だけを踏み、1ー2小節間はペダルを無しにする方法です。3ー4小節間を踏み、次の小節の1拍目でペダルを離すことにより、左手の和音をスムーズにつなげることが出来ます。もう1つは、ペダルを2拍単位で踏むことです。どちらの方法でもかまいませんし、場所によって使い分けてもかまいません。
これらの(少なくとも2拍間は踏み続ける)の方法でペダルを踏んでも、やはり濁りは避けることができません。徹底的に濁りを避ける踏み方もあるにはあるのですが、筆者はあえて少し故意に濁らせる上記のペダルを推奨します。半音進行の濁りによって、実にロマンティックな美しさが演出できます。あまりにも、竹を割ったように、完璧に濁りを避ける事が、標題を描写するという事も言えますが、あまりにも無味乾燥な演奏になってしまうと筆者は感じます。
ドルチェで、ppで上記ペダルを使い、たっぷりとルバートをかけることで曲が別物になります。
ご参考まで。